アップルが「iPad Air」の復活と、新しい「iPad mini」を発表した。特に小型のタブレット端末を待ち望んでいた人々にとってはビッグニュースとなるはずだが、なぜか静かな船出となった。そこには、アップルが重要な新サーヴィスの発表を目前に控えているという大きな理由がある。
TEXT BY LAUREN GOODE
まばたきしている間に、アップルの最高経営責任者(CEO)であるティム・クックのツイートを見逃してしまったかもしれない。Twitterに投稿された写真で彼は「iPad mini」を持ち、スタイラスペンで「hello」と書いていたのだ。
新しいiPad miniは、2015年に発売された「iPad mini 4」以来のアップデートになる。そのときからずっと、小型タブレット端末のファンは新製品を待ち望んでいたのだ。あまりに時間が経っているので、もう新しい端末の投入はないだろうと、あきらめていた人もいたほどである。
しかしiPad miniは、すっきりしたフォルムの「iPad Air」とともに“復活”した。2019年3月18日(米国時間)に、アップルが新モデルを発表したのである。
— Tim Cook (@tim_cook) 2019年3月18日
新しい部分と、新しくない部分が混在
iPad miniとiPad Airは、まさに「新しい」という枕詞がふさわしい製品だ。新しいプロセッサーを搭載しており、ディスプレイがアップデートされている。そして、どちらもアップル純正のスタイラスペンである「Apple Pencil」に対応している。
だが、名前と設計は新しくない。iPadシリーズの上位モデルとは違ってベゼル(画面の枠)があり、接続端子はUSB-CではなくLightningのまま。そして、いまだにホームボタンがついている。
今回の2つのモデルの発表によって、アップルのiPadシリーズのラインナップは5つに増えた。タブレット端末の市場が縮小傾向にあるにもかかわらず、である。
新しいiPad miniは、サイズとディスプレイの解像度は旧モデルと同じだが、色温度を自動調節する「True Tone」技術によって画面の色域が広い。また、より高速なWi-FiとギガビットLTEにも対応しているほか、機械学習に特化したニューラルエンジンを組み込んだ「A12 Bionic」チップを搭載している。これはiPhoneを含むアップルの高額モデルで採用されているのと同じチップだ。
性能と価格の微妙なバランス
新しいiPad Airには、少し首をかしげざるを得ない点がある。まず、旧モデルのiPad Airは数年前に生産終了となったので、新モデルは本当の意味での復活と言っていい。だが、製品名に「Air」と謳っているにもかかわらず、iPadで最薄というわけではないのだ。
実は上位モデルである「iPad Pro」のほうが、ほんの少し薄い。しかし、iPad Airは重量が456g(Wi-Fiモデル)なので、iPad Proより軽い。
そのほかのアップデートされた点は、iPad miniとあまり変わらない。True Toneディスプレイ、A12 Bionicプロセッサー、ホームボタンと指紋センサーの組み合わせ、そして第1世代のApple Pencilへの対応といった具合だ。また、どちらも8メガピクセルの背面カメラと7メガピクセルのフロントカメラを搭載し、HD画質のヴィデオに対応している。
新しい2モデルは、すでに受注が始まっている。iPad Airはストレージ容量が64GBで499ドル(日本では54,800円)から、iPad miniは399ドル(同45,800円)からとなる。
つまり、iPad miniが最も低価格なiPadというわけではない。いちばん安いのは昨年発売の9.7インチのiPadで、これなら329ドル(日本では37,800円)から購入できる。
このiPadはプロセッサーの性能が少し低く、新モデルほどディスプレイも優れてはいない。これに対してiPad AirとiPad miniは、ハイエンドのノートパソコンくらい高額なiPad Proよりは、ずっと安い。
溝を埋める存在
IDCのリサーチ・アナリストであるローレン・グーンヴァーは新しいiPad Airについて、低価格帯のiPadとハイエンドであるiPad Proとの間の「踏み切り板」のような存在であると指摘する。特にアップルが10.5インチモデルのiPad Proを静かに消し去ってしまったいま、生じた溝を埋める重要な存在になっている。
「iPad Airは、販売価格の溝を埋め、ブランドに発生した溝を埋めています。より高額なモデルへと導くためにも、販売する必要があるモデルなのです」
iPad miniは、その小さなサイズゆえにユニークな立ち位置にある。ゲーム好きの子どもたちのほか、メディアの記事などのコンテンツを読むために「Kindle」サイズの端末を探している人、飛行機によく乗る人、仕事中に(なんとか)ポケットに入るサイズの端末を探している医者や専門家など、幅広い人々にとって魅力的なハードウェアとなる。
また、販売の現場でPOS端末を刷新したいと考えている中小企業にとっても人気のある選択肢となる。アップルは一般消費者を対象にしたテック企業として長い歴史があるが、消費者はそれほど頻繁にタブレット端末を買い換えるわけではない。だからこそ企業向けのニーズがあることを、同社も理解している。
「タブレット端末の分野で明るい展望があるとすれば、法人需要です。なかでも現場で作業する人々でしょうね」と、グーンヴァーは話す。「現場の作業員は、スマートフォンより多くのことをこなせる端末を必要としています」
一方でグーンヴァーは、こうしたニーズは近い将来、拡張現実(AR)メガネにとって替わるだろうとも指摘する。だからこそ、かつて人気を博したモデルをアップルが刷新するなら、「その意味では、いましかないと思います」と、グーンヴァーは言う。
ハードとソフトの発表を分けた理由
新しいiPadの発表は、アップルが3月25日に予定している発表会の、ちょうど1週間前となった。この発表会では、新たなサブスクリプションサーヴィスの発表が予想されている。この新サーヴィスではニュースに加えてヴィデオの配信が強化され、NetflixやAmazonプライム・ビデオなどと真正面から競合する可能性がある。
関連記事:アップルが3月25日に発表する「まったく新しい何か」の中身
一方、昨年の同じ時期にアップルは、ハードウェアとソフトウェアの両方に焦点を当てたiPadのイヴェントをシカゴで開催していた。このときは新しいApple Pencilに対応したiPadが発表され、教師や生徒をターゲットにしたソフトウェアが組み合わされていた。
だがアップルは、今回は明らかにハードとソフトの発表を同時に実施したくなかったようである。だからこそ新しいiPadの発表は、いつもよりずっと静かだった。
昨年の秋には新しいiPad Proの発表イヴェントが、ニューヨークのブルックリン音楽アカデミーで大々的に開催されている。ところが、今回の発表でわたしたちが目にしたのは、シンプルで謎めいたツイートひとつだったのである。
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https://wired.jp/2019/03/19/ipad-mini-ipad-air-2019/
2019-03-19 08:00:00Z
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