[ロンドン 27日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トルコのエルドアン大統領は、市場との戦争全体を制するのではなく、局部的な戦闘で勝ちを拾う道を選んだ。具体的には通貨リラの投機売りを困難にする措置を講じ、規制当局が金融機関の調査リポートへの締め付けを開始した。
前者は一時的にリラを支えるだろうが、後者によって金融機関は重要なリポートの発行をためらうかもしれない。ただどちらの手段も、最終的には有効に作用しない。
22日にリラが対ドルで4%強安と、昨年の通貨危機以来の下落率を記録すると、トルコ政府は迅速に反応した。国内銀行は海外の主要市場でリラの流動性をそのまま保持するよう命令されており、少なくとも31日の地方選が終わるまでそうした状態を続けなければならない、と複数の関係者が27日ロイターに語った。一方、銀行監督と証券市場規制をそれぞれ担当する当局は、JPモルガン(JPM.N)の公表したリポートがイスタンブール証券取引所の投機を引き起こしたとの申し立てを受け、調査に乗り出している。
リラの流動性に縛りをかけたことで、ロンドンの翌日物スワップ金利は27日に700%まで跳ね上がり、リラ安に賭ける取引が事実上封じ込まれている。このためスポット市場でリラの対ドル相場は22日の安値から7%上昇した。
もっともこの縛りは投資家にとってリラ建て資産のヘッジコストも大幅に増大したことを意味しており、今後彼らが保有資産処分に動くかもしれない。既に年初来で9%近く下落している主要株価のBIST100指数には一段と下げ圧力がかかってしまう。
当局が好ましくないとみなす見解を記したリポートを発行する金融機関への調査も、逆効果になるのではないか。多くの銀行はこれまでにトルコについてメディアに意見を述べるのを自粛している。その上、顧客への発信がもっと少なくなり、トルコや同国企業に関して特に専門家による調査リポートを発行するのをためらうだろう。
こうした事態は、マクロ経済を巡る見解が必要な人々にはそれほど重大ではない。なぜなら物価上昇率や政府予算、経常収支などは公開されているからだ。ところが海外を拠点にしてトルコの社債や株式に投資する向きは、現在地元アナリストから得ている詳しい知識を入手するのは難しくなるかもしれない。
無視されるというのは市場においては喜ばしいとは言い難い。だからエルドアン氏による締め付けは、結局はより多くの資金をトルコ国外に追いやるのではないだろうか。
●背景となるニュース
・トルコ政府は少なくとも31日の地方選が終わるまで、銀行に海外主要市場のリラ流動性の現状維持を命じ続ける、と3人の関係者が27日ロイターに語った。
・リラの信頼を高めることを狙ったこの措置で、ロンドンの翌日物スワップ金利は700%と過去最高水準まで上がり、外国人投資家がリラ安に賭ける取引をしたり、リラ建て資産のヘッジをするハードルがとてつもなく高くなった。
・トルコの銀行監督当局は23日、JPモルガンなどに対する調査を始めたと発表した。リラと主要株価指数の急落後に、これらの金融機関のリポートを問題視する苦情が寄せられたためだ。証券規制当局もJPモルガンのリポートが「誤解を招き」、イスタンブール証券取引所の投機を生み出したとの申し立てを受け、調査に乗り出した。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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https://jp.reuters.com/article/bv-column-turkey-idJPKCN1R90KV
2019-03-28 07:16:00Z
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