[東京 22日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が19─20日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表以降、FRBと米株式市場との認識ギャップが大きくなっている。パウエルFRB議長は、米中経済摩擦など踏まえた米経済見通しを注視していると指摘。
高水準で推移する株価を支える市場の楽観的な心理とは対照的だ。
東京から見た場合、米中経済摩擦の継続による米経済の減速シナリオは、対中貿易の比重の大きい日本にとって「対岸の火事」と放っておけない。また、市場がリスクオフに傾けば、円高のリスクも高まる。東京市場の参加者は、NYのFEDウオッチャー並みに米経済の動向を注視すべき理由がある。
FOMC直後の市場反応は、「年内利上げ想定せず」「9月に資産縮小終了」という想定を超える「ハト派」的メッセージの発信で、いったんは株価上昇/金利低下/ドル下落で反応した。
しかし、21日のNY株式市場では、3月のフィラデルフィア連銀業況指数が急反発した[nL3N2182WK]ことや米新規失業保険週刊申請件数が予想を超えて減少[nL3N2182NC]し、景気鈍化への警戒感の低下を背景にダウ.DJIは200ドルを超える上昇となった。
FRBが発した警戒感は、かなり強いと思われる。実際、FOMCメンバーの政策金利見通し(ドット・チャート)で示された年内の利上げ回数はゼロとなり、20年は1回との見通しが示された。
その一方、パウエル議長は「依然として米経済は年内、底堅く成長すると予想」、「労働市場は堅調」とも述べている。
<ハト派的認識の裏に何があるのか>
それでは、どうして市場の予想を超えて「ハト派」的なメッセージを出したのか。「成長は特に中国や欧州で鈍化」「昨年9月以降の指標から、成長は予想よりも鈍化しているもよう」とパウエル議長は指摘した。
米中通商摩擦の影響も含めた中国経済の先行きに対する懸念が、背景にあるのではないかと推測させるような「言い回し」だったように感じられる。
今のところ、FRBの懸念の核心が何か、市場の楽観シナリオが後退し、FRBの懸念が実現してしまう可能性がどの程度あるのか、確たる手がかりはない。
ただ、20日のFOMCを受け、21日のNY金融・債券市場では、3カ月物財務省短期証券(TB)US3MT=RRと10年米国債US10YT=RRの利回り格差は、2007年8月以来の水準に縮小した。
この水準縮小は、市場におけるリセッションへの警戒感の高まりを示すとされる。
<対中関税継続なら、中国に打撃か>
1つ気がかりなのは、米中通商交渉が当初期待された2月末の合意ができず、最終合意のメドが不透明になっていることだ。
そのうえトランプ米大統領が20日、対中関税について「かなりの期間」維持する可能性に言及した。その背景としてトランプ大統領は「(協議に関し)合意するのであれば、中国に確実に履行させる必要がある」と述べた。
複数のチャイナウオッチャーによれば、足元での中国経済の減速の大きな要因の1つに、米国による10%の関税賦課がある。
だからこそ、中国側は対米交渉で早期の関税撤廃を双方で実行することを提案していたが、それへの回答が、トランプ大統領の発言だった。
中国経済はしばらくの間、10%関税という「重石」を背負って進むことになりそうで、中国経済の回復─欧州経済の回復─リスクオン心理の拡大というシナリオの実現性は、少なくとも2019年半ばまでは難しそうだ。
<中国経済減速、長期化なら日本にも余波>
中国の減速継続は、日本にとってはある意味で米国の受けるマイナス効果よりも、打撃が深くなる可能性がある。18日発表された2月貿易統計で、アジア向け輸出は前年同月比マイナス1.8%。輸出全体も3カ月連続で前年割れだった。
日本企業の中には、対中ビジネスの比重が高いところが少なくなく、輸出減─生産減が継続するようなら、企業経営者の心理を冷やし、19年度の設備投資計画を抑制させかねない。そこまでリスクが拡大するようなら、アベノミクスの下で拡大を続けてきた日本経済に「黄信号」が点灯しかねない。
もし、FRBが中国経済の動向を念頭に慎重な米経済の先行きを展望しているなら、日本の政策当局は、米国並みかそれ以上に下向きのリスクに敏感になるべきだろう。
FRBと米株式市場の間の認識ギャップが存在している間が、日本にとっての猶予期間と言えそうだ。
https://jp.reuters.com/article/column-frb-idJPKCN1R30WD
2019-03-22 10:48:00Z
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