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コラム:次の日銀利上げ、賃上げからサービス価格への波及がカギ - ロイター (Reuters Japan)

コラム:次の日銀利上げ、賃上げからサービス価格への波及がカギ

 日銀が19日にマイナス金利政策の解除を決め、市場は次の利上げが「かなり先」とみて、21日のドル/円は151円後半まで円安が進んでいる。では、日銀の利上げは本当に相当先なのか。写真は日銀の植田総裁。19日、日銀本店で撮影(2024年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 21日 ロイター] - 日銀が19日にマイナス金利政策の解除を決め、市場は次の利上げが「かなり先」とみて、21日のドル/円は151円後半まで円安が進んでいる。では、日銀の利上げは本当に相当先なのか。そのカギはサービス価格の動向が握っていると指摘したい。大幅な賃上げが一定のタイムラグを伴ってサービス価格を押し上げれば、日銀が物価上振れリスクを視野に利上げを検討する展開もあり得ると考える。

<植田総裁発言の含意>

19日の会見で、植田和男・日銀総裁は「現時点の経済・物価見通しを前提にすれば、当面緩和的な金融環境が継続する」、「予想物価上昇率は2%まで距離があり、緩和的な金融環境を維持しつつ政策運営を行っていく」と述べ、市場はハト派的と判断して円安が進んだ。

ただ、植田総裁は「基調的な物価見通しがもう少し上昇すれば、短期金利の水準引き上げにつながる」、「物価見通しがはっきり上振れるとか上振れリスクが高まれば政策変更の理由になる」とも語った。

マーケットは結果的にこの部分の発言の意味合いを無視した格好だが、筆者はこの総裁発言にはかなりの含意があったとみている。

その含意を解き明かすヒントは、1月会合で政策を維持し、3月会合でマイナス金利解除を決めた理由について、春闘のウエートが大きかったのかと質問され、回答した部分に隠されていると考える。

植田総裁は「春闘の第1回集計が大きな要素になったのはおっしゃるとおり。ただ、それだけではなくサービス価格もずっと注目しており、宿泊等、全般的にしっかりしていることが確認できた」と述べ、サービス価格の重要性に言及した。

筆者は、次の利上げを日銀が検討する際にも、サービス価格の動向が大きなウエートを占めると考えている。

<賃上げからサービス価格への波及>

連合の第1回集計における賃上げ率は5.28%と33年ぶりの5%超えだったが、そのうち中小企業の回答は4.42%と多くのエコノミストの予想を大幅に上回った。また、有期・短時間・契約等労働者の賃上げ額は、時給6.47%・月給6.75%と高い伸びを示した。

この大幅な賃上げ率は、コストに占める人件費の比率が高いサービス分野で値上げにつながる可能性が高いと筆者は予想する。33年ぶりの高い賃上げ率となった結果、人件費増大がサービス価格に波及して値上げが続出するという事態を「実体験」した人の割合は、広く民間企業だけでなく政策当局でも少ないはずだ。

従って足元でのサービス価格の上昇が宿泊や外食、携帯電話料金などごく限られた分野で起きている「特殊現象」と捉えている市場関係者が圧倒的に多い。

<バス・宅配・家事代行、上がり出すサービス価格>

しかし、大幅な賃上げは幅広いサービス価格に波及する可能性がある。これまでサービス価格が大幅に上昇してこなかったのは、30年間の賃金据え置きとも言うべき日本的現象の結果だったと言えるのではないか。2024年の大幅な賃上げは、上がらないサービス価格という厚い壁をぶち破り、夏から秋にかけてサービス価格の連鎖的な値上げ現象を起こす可能性を高めていると予想する。

すでに人出不足が深刻なバス業界では運賃を引き上げる動きが続き、京王バスが3月16日から220円を230円に、東急バスが同額の値上げを3月24日から実施する。小田急バスは6月1日から220円を240円に値上げする。

宅配便も4月から大手2社が値上げを予定しているが、この動きは小売り全体の中でシェアを拡大しているインターネット販売の値上げつながる可能性がある。このほか、ダスキンが家事代行サービスやハウスクリーニングの料金を4月1日から値上げするとすでに発表している。

<ニセコ現象は例外なのか>

北海道ニセコ町では、上質な雪を求めて海外からスキー客などが多数訪れ、宿泊と外食の料金が急騰する一方、人出不足を背景に人件費も急上昇。時給2000円を超すアルバイト料も珍しくなく、カツカレー3200円の飲食店もあると一部で報じられて話題になっている。ニセコは特殊な例としてメディアは取り上げているが、人件費とサービス価格の上昇が連動する先行事例と見る必要があるのではないか。

2月の東京都区部の消費者物価指数(CPI)は、総合が前年比2.6%上昇、コアCPI(生鮮食品除く総合)が同2.5%上昇だった。これを財とサービスに分けると、財が同3.1%上昇、サービスが同2.1%上昇だった。

サービスがこれから上昇幅を広げ、CPI全体の上げ方が大きくなった時、日銀はこの動きが一過性なのかどうか確認することになるだろう。賃上げからサービス価格上昇への波及が基調的な動きと見れば、次の利上げの検討に入る可能性が高まる。

賃金上昇からサービス価格の上昇加速へとつながるのかどうか。今後の推移を注視していく必要があると考える。

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2024-03-21 10:32:52Z
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