少子化に歯止めのかからぬ現実が改めて突きつけられている。令和5年の出生数が2年連続で80万人を割り過去最少を更新した。
厚生労働省が発表した人口動態統計の速報値(外国人を含む)によると、5年の出生数は75万8631人だった。死亡数から出生数を引いた自然減は83万1872人で、減少幅は過去最大である。
少子高齢化とそれに伴う人口減少は国の活力低下につながりかねない。社会保障制度の持続可能性にも影響する深刻な事態だと受け止める必要がある。
政府は少子化対策関連法案を衆院に提出したが、少子化克服への機運が高まっているとは言い難い。岸田文雄首相はもっと危機感を持ち、国民との認識の共有を図らねばならない。
今国会で法案を確実に成立させ、速やかに実行に移すべきは当然である。対策の柱の一つは児童手当の拡充だ。中学生までとなっている支給対象を高校生の年代まで拡大し、第3子以降は月額3万円に倍増させる。
両親が育児休業を取得した場合の給付を手取りで育休前の10割相当に引き上げることや、親の就労状況にかかわらず子供を時間単位で預けられる「こども誰でも通園制度」の創設なども法案に含まれている。
子育て世帯を対象にした対策が目立つが、未婚化、晩婚化も少子化の要因だ。今回、婚姻数は48万9281組と戦後最少となった。50万組を割るのは90年ぶりである。日本は婚外子が少ないため、婚姻数の減少は出生数に大きく影響する。
収入面の不安から結婚や出産をためらうことのない社会にしたい。将来への不安を解消するため、若年層の雇用の安定と所得の向上は急務である。
一方、財源に関し、首相はより誠実な対応が求められる。
政府は公的医療保険料に上乗せして徴収する支援金制度を8年度に創設する。徴収額を段階的に引き上げ、10年度に約1兆円確保することを目指す。歳出改革と賃上げで「実質的な負担が生じない」と繰り返すが、説明が分かりにくい。
歳出改革の名のもとで介護・医療サービスが低下する懸念は拭えない。今後は、サービスを利用する人の自己負担が増えることもあり得る。負担増の議論に真摯(しんし)に向き合わなければ、支援金制度は軌道に乗るまい。
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2024-03-02 20:00:00Z
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