日本の株高の背景として、国内景気の好転や上場会社のコーポレートガバナンス(企業統治)に対する期待が語られることが多い。だが、依然として米国の株高に依存した部分が大きい点は否定できず、今後は日本独自の投資魅力をどこまで高められるかどうかが鍵になりそうだ。
昨年から日本企業の経営改革に対する期待が国内外の投資家から注目を集め、日経平均株価が史上初めて4万円の大台に乗せるなど世界の主要市場と比べても日本株はひときわ堅調だ。ただ、2023年以降の米S&P500種株価指数とドル建ての東証株価指数(TOPIX)の相関係数は0.95と歴史的な高水準に近く、足元の日本株上昇の大半は結局、同じく最高値圏にある米国株の強さに起因していることを示している。
ソニーフィナンシャルグループの渡辺浩志シニアエコノミストは、高い相関の背景には「海外マネーが相場を動かしており、米国株が上昇すると、分散投資で日本にも投資が来る」構図があると指摘した。日本取引所グループの統計によると、海外投資家の昨年1年間の売買代金シェアは68%に上る。
企業業績の面からも海外景気の影響は大きい。トヨタ自動車や日立製作所、メガバンクに至るまで日本の大企業の多くは利益のかなりの部分を海外で稼いでいる。加えて、日米双方で株高をけん引している大きなテーマの一つが、飛躍的に成長する人工知能(AI)向け需要の拡大が期待された半導体関連企業のエヌビディアや東京エレクトロンなどの急騰だ。
MUFGの10-12月純利益は3.3倍に、海外の利ざや改善など寄与
欧米投資家はまだ「熱量低い」
グローバル投資家からすれば、日本株と米国株の相関がこれほど高ければ、わざわざ日本株に投資せず、米国株を買えば済むとの議論も成り立つ。日本株が過去10年以上にわたり米国株をアンダーパフォームし続けていることを踏まえればなおさらだ。アベノミクス相場が始まった12年末以降で見ても、米S&P500がほぼ4倍になったのに対し、ドル建てTOPIXの上昇は2倍にとどまる。
シティグループ証券の阪上亮太チーフ株式ストラテジストによると、低迷する中国株の代替投資先を探すアジアの投資家が日本株に強い関心を寄せているのに比べ、欧米の投資家は「熱量が低い印象」だと言う。この2年余りを見ても、ドルベースの日本株と米国株はほぼ同じ動きで、「日本株にそれほど関心を持つ必要はない。米国株で良いというアングルはまだ強い」と話した。
その上で阪上氏は、今後は企業の国内投資が活発になるなど日本独自の要因が顕在化し、「ドルベースで見ても日本株が強いとなると、慌てる投資家が増えてくるだろう」とみている。
同氏も含め、市場関係者の間で日本株の先行きに楽観的な見方が増えているのは事実だ。年初来のドル建てTOPIXのパフォーマンスは米S&P500を0.8%ポイント下回るが、今回の上げ相場を主導する大型株で構成されるTOPIXコア30指数で見ると、S&P500を5%ポイント超上回る。08年の世界金融危機以降、年間でTOPIXがS&P500を上回ったのは過去に2回しかなく、変化の兆しと捉えることもできる。
米国株と比べた割安感は、日本株の魅力として依然として残っている。予想株価収益率(PER)はS&P500の20.9倍に対し、TOPIXは15.9倍だ。ピクテ・ジャパンの田中純平ストラテジストは、日本企業が株主還元を加速させれば、日米のバリュエーションギャップが縮小する形で日本株は米国株との連動性を維持しつつ、アウトパフォームする展開も描けるとの見方を示す。
長年にわたり米国株に後れを取ってきた日本株にとって、米国株と同程度のパフォーマンスを維持できている点はガバナンス改革などが奏功し、日本企業も米国企業と同じ目線で投資されるようになったと見ることもできそうだ。
ニッセイ基礎研究所の前山裕亮主任研究員は「米国株が非常に強い中で、それについていけるようになったのは日本企業が良くなったという前提があるから」だと指摘。現在の日本株は「追い風が吹いている時にしっかり帆を上げらているが、逆風が吹いた時にどの程度自力で耐えられるのかが課題」と語った。
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2024-03-06 00:13:34Z
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