米欧の金融当局は相次いで今後の政策決定会合での利上げの可能性を示唆したが、経済的損失が拡大するのではないかとの投資家の懸念が影を投げかけている。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は14日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合終了後の記者会見で、インフレを鈍化させるためには2023年中に「幾分か」の追加利上げが適切になると説明。同時に公表された最新のドット・プロット(金利予測分布図)では年内に合計0.5ポイントの利上げが示唆された。一方、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は15日、7月の追加利上げの「公算が極めて大きい」と発言した。
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これを受け米国債とドイツ国債の逆イールド(長短金利差逆転)が進行。政策当局者が米経済のリセッション(景気後退)入りを回避できないのではないかとの市場の懐疑的見方が示唆された。2年国債と10年国債との利回り格差(スプレッド)は15日、米地銀危機直前の3月初旬以来の水準に達した。
市場が懸念しているのは中銀当局者がインフレ退治に注力するあまり、経済が急速に悪化し、消費者物価指数(CPI)の大幅鈍化で急いで利下げに転じざるを得なくなる事態だ。
ECBは2000年以降に既に2回、利上げで痛い経験をしており、このリスクを十分把握している。また、いち早く政策引き締めを開始したニュージーランドのリセッション入りが15日確認されており、あらためてこのリスクが浮き彫りになった。
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GAMインベストメンツの投資ディレクター、チャールズ・ヘプワース氏は「中銀は総じて、経済が鈍化ないし既にリセッション入りしていても利上げはなお正当化されるとみているようだ」とし、「政策ミスは予期せぬ結果を招く可能性が高い」と指摘した。
FOMCは14日に主要政策金利の据え置きを決定したものの、投資家は年内にあと2回の0.25ポイントの利上げがあると見込んでいる。そのうち1回は、実際に行ってみないと結果が分からない「ライブ」な会合になるとパウエル議長が評した7月のFOMC会合になるかもしれない。
短期金融市場のトレーダーは現在、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジ上限が約5.5%と、2000年代に入って最も高い水準まで引き上げられると予想している。ECBについては10月までに過去最高の4%のターミナルレートに達する確率を五分五分とみている。
フィデリティ・インターナショナルのグローバル・マクロ・エコノミスト、アンナ・ストゥプニツカ氏は「3.75%のターミナルレート予想に対するリスクは上振れ方向だ」と述べた。
しかしこうした見通しの一方で、市場には懸念される兆候がみられている。逆イールドは、向こう数年でリセッション入りに伴うインフレ鈍化により金融当局は利下げに転じざるを得なくなるとトレーダーがみていることを示すことが多いからだ。
15日に公表された米経済指標は同国経済が持ちこたえているものの、勢いを失っていることを示唆した。5月の小売売上高は予想を上回る伸びとなったが、消費者需要の鈍化も示した。5月の製造業生産指数は低い伸びにとどまり、米新規失業保険申請件数は21年後半以来の高水準。
ユーロ圏経済も1-3月(第1四半期)まで2四半期連続で小幅のマイナス成長と、緩やかなリセッションに陥った後も景気低迷の兆候を示している。ラガルド総裁はユーロ圏経済が「停滞」し、短期的に低迷が続く見通しだとした。
HSBCアセット・マネジメントのグローバルチーフストラテジスト、ジョゼフ・リトル氏は「現時点でのリスクはECBが緩やかに動き、一段と遅行する経済指標に集中することで、無自覚的に過度の引き締めに至ることだ」とし、「この引き締めサイクルの最後の数回の利上げを将来、『政策ミス』として振り返ることになるかもしれない」と指摘した。
原題:Global Rate-Hike Endgame Is Now Haunted by Recession Worries(抜粋)
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2023-06-16 00:00:58Z
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