韓国サムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)会長の経営権継承を巡って資本市場法違反などの罪に問われた裁判で、ソウル中央地裁は5日、李氏に無罪判決を言い渡した。サムスングループを取り巻く司法リスクは後退した。
起訴状によると、サムスングループ企業2社の合併を巡って、李氏がグループ支配力を高めるために不正に合併企業の株価を操作したとして資本市場法違反と背任などの罪に問われた。
検察側は2015年に合併したグループ会社のサムスン物産と第一毛織を巡って、李氏が大株主の第一毛織の保有資産を過大計上させ、逆にサムスン物産の業績を悪化させて合併比率を不正に操作したと主張していた。検察側の求刑は懲役5年、罰金5億ウォン(約5500万円)だった。
裁判官は両社の合併について「李氏の継承や支配力強化が唯一の目的ではなく、全体的に不当と見ることはできず、株主に損害を及ぼしたと認めるに足る証拠がない」とした。
同事件は、17年と21年に李氏が収監された朴槿恵(パク・クネ)元大統領側への贈賄罪とは異なり、創業家が支配する韓国財閥の企業統治(ガバナンス)を巡る問題だった。
5日の地裁判決でサムスン会長を取り巻く司法リスクは解消へと向かうことになった。過去2度の収監に至った朴槿恵元大統領側への贈賄罪は、22年8月に特別赦免を受けて罪が帳消しになっており、検察側が控訴するかが今後の焦点となる。
一方、足元でサムスンの事業環境は厳しい。23年12月期の営業利益は半導体市況の悪化を受けて15年ぶりの低水準に落ち込んだ。スマートフォンでは世界首位の座を米アップルに奪われた。スマホやディスプレーなど主力事業では競争力を高める中国企業が背後に迫る。
李会長は23年11月の最終尋問で「私とサムスンに対する国民の期待水準は高く、至らぬ点を痛感した。サムスンを世界的な一流企業に跳躍させるためにすべてを尽くす」と話した。トップ主導で事業構造の変革スピードを高め、再び成長軌道に乗せる考えを示していた。
(ソウル支局 細川幸太郎)
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2024-02-05 07:53:27Z
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