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コラム:避けられない米中貿易戦争激化、FRBが利下げ迫られる可能性も - ロイター (Reuters Japan)

コラム:避けられない米中貿易戦争激化、FRBが利下げ迫られる可能性も

 5月15日、11月の米大統領選で誰が勝利しても、米国と中国の貿易戦争がエスカレートするのは回避できそうにない。写真は米国と中国の国旗。ボストンで2021年11月撮影(2024年 ロイター/Brian Snyder)

[オーランド(米フロリダ州) 15日 ロイター] - 11月の米大統領選で誰が勝利しても、米国と中国の貿易戦争がエスカレートするのは回避できそうにない。だが同時に避けがたいインフレ圧力が、米連邦準備理事会(FRB) の金融政策運営姿勢をよりタカ派的にするとは、必ずしも言えないだろう。

関税引き上げが輸入物価上昇を通じたインフレよりも、雇用と経済成長への打撃という面で大きなマイナスをもたらすならば、この米中貿易戦争の新たな局面がFRBの政策担当者の手を縛り、利下げを迫る圧力が利上げと同じぐらい大きくなる。

バイデン政権はこれまで何年も、トランプ前政権が2018─19年に打ち出した3000億ドル強相当の中国からの輸入品に関税を適用する方針を踏襲してきたが、今週になってさらに180億ドルの中国製品に新たな関税を課すと発表した。

中国が対抗措置を講じるのは必至で、インフレスパイラルの懸念は高まりつつある。しかし、各種調査からは関税が実体経済や労働市場、株式市場にも痛手を与えることが分かっており、その痛手が大きければ大きいほど、FRBの政策対応は緩和方向になり得る。

経済学者2人がまとめた21年の研究論文「保護貿易主義と米製造業雇用」では、保護主義的政策は、推進派の主張とは逆に製造業雇用を減らすことが分かっている。

当然ながら米国の貿易相手が報復に動けば、雇用の落ち込みも深くなる。経済学者2人のモデルに基づくと、米国が中国に対して一方的に輸入関税を発動した場合、税率がそれぞれ30%、45%、60%で米国の製造業雇用は1.3%、1.8%、2.15%減ることになる。

米中双方が関税を適用する展開なら、税率30%、45%、60%での雇用減少率は2.6%、3.3%、3.8%に高まる。

これを現在実数化すれば、およそ30万─85万人の雇用が失われる計算だ。

論文は「保護貿易措置を通じて国内製造業の雇用を守りたいという米国の願いはかなえられないのではないか」と結論付けている。

<重い代償>

トランプ前政権の対中関税政策も米国の製造業雇用にプラスの効果を生み出さなかった。それどころかムーディーズ・アナリティクスの分析では、貿易戦争によって米国全土で30万人の雇用が犠牲になった。

ブルッキングス研究所のライアン・ハス氏は先月、中国との貿易戦争は米経済に重い代償をもたらすと記した。雇用喪失のほか、輸入価格上昇が消費者への「逆進的な税」となり、米株式市場も相当な打撃を被るという。

ハス氏はニューヨーク連銀とコロンビア大学が20年に行った調査を引用。その調査では、トランプ前政権の4年間続いた米中貿易戦争の結果、株価が6%、1兆7000億ドル相当押し下げられたことが判明している。

足元の米国株式市場で6%の値下がりが起きれば、S&P総合500種(.SPX), opens new tabの時価総額は約2兆6500億ドルが吹き飛ぶ。また既にバリュエーションが目一杯膨らみ、18─19年当時を上回っている以上、より大幅な調整にさらされやすくなっているかもしれない。

ゴールドマン・サックスのエコノミストチームも先月、18─19年の経験を踏まえると貿易戦争は金融環境の引き締まりや、企業心理への打撃、貿易政策を巡る不確実性の増大といった間接的なマイナスの影響が生じる公算が大きいとの見方を示した。

同社の推計によると、中国が報復措置を講じないシナリオでも、実効関税率が1ポイント上昇するごとに国内総生産(GDP)は0.13%、中国の報復があれば0.15%押し下げられる。

一方で実効関税率1ポイント上昇に伴うコア消費者物価指数(CPI)上昇率は0.1%超程度で、1年間は物価全般を押し上げるが、2年目から前年比での影響はなくなる。

<中国からの輸入は縮小>

最新のロイター/イプソス調査は、バイデン大統領とトランプ前大統領の支持率が拮抗していることを示している。そうした中でトランプ氏はバイデン氏よりずっと「好戦的」な姿勢を取り、中国製品全てに60%、そして特定品目にはもっと高い率の関税を発動するとしている。

トランプ氏は14日、「中国が今もわれわれの昼食を食べ続けている(米国の輸入市場を侵食し続けている)」ので、新しい関税を従来とは別の製品まで適用するべきだと発言した。

とはいえトランプ氏が対中貿易戦争の火蓋を切った5年余り前と比べると、米国の輸入市場における中国の存在感は低下した。バークレイズのエコノミストチームの指摘に従えば、2023年1─11月に米国が輸入した全製品に占める中国製品の比率は13.9%で、17年の21%を著しく下回っている。

今やメキシコが米国最大の輸入先になっており、全輸入品に占める比率は15%に上る。中国製品の輸入縮小の穴を埋めているのは、韓国やベトナムなどだ。

米国は輸入の面で中国への依存度が下がり、他国からの購入が増えている。さらに幾つかの重要セクターでは国内に生産拠点を構築しつつある。政策担当者としては、中国との貿易を巡る緊張激化が、今回はそれほど大きなダメージにならないことを祈るばかりだろう。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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Opinions expressed are those of the author. They do not reflect the views of Reuters News, which, under the Trust Principles, is committed to integrity, independence, and freedom from bias.

Jamie McGeever has been a financial journalist since 1998, reporting from Brazil, Spain, New York, London, and now back in the U.S. again. Focus on economics, central banks, policymakers, and global markets - especially FX and fixed income. Follow me on Twitter: @ReutersJamie

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2024-05-16 04:05:39Z
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