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【コラム】銀行破綻でFRBの方向転換シナリオ復活-オーサーズ - ブルームバーグ

世界の金融システムが動揺している。米国のシリコンバレー銀行(SVB)が破綻した。2008年のリーマン・ブラザーズ破綻をきっかけにワシントン・ミューチュアルも破産申請を余儀なくされたが、米国の金融機関としてはそれ以来最大の破綻となった。

  12日にはニューヨークのシグネチャー・バンクも事業停止を強いられた。ドットコムバブル崩壊と世界的金融危機の組み合わせの中に突然放り込まれたかのような感がある。

  こうした状況をマクロ的な文脈からも見てみたい。米国債にとって、先週は歴史的にも波乱に満ちた1週間だった。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が来週の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5ポイントの利上げがあり得ると議会証言で示唆し、米2年国債利回りは5%を突破した。

  9日に発表された週間の米新規失業保険申請件数で失業増が示され、利回りは急低下。10日になると2月の雇用統計が発表された。非農業部門の雇用者数は予想以上に増加したが、失業率は上昇。SVBに関するニュースが流れると、利回りは大きく低下した。

Reversal of Fortune | After rallying, 2-year Treasury yields dropped almost 50bps in two days

 

  1987年までさかのぼり、2年債利回りの2営業日での大きな下げをまとめてみた。87年のブラックマンデーや89年のミニクラッシュ、2001年9月11日の同時多発テロ、08年9月のリーマンショックと金融機関の救済資金を盛り込んだ問題資産購入計画(TARP)の議会での否決など最近の金融史に残る危機的状況が上位5位までを占める。SVB危機に伴う2日間の2年債利回り低下幅はそれに次ぐ6位となった。

A Bond Market Jolt for the Ages | Since 1987, 2-year yields fell this much in 2 days only 5 times, in crises

 

  SVBだけで以前の危機に匹敵するシステミックリスクをもたらすとは言い難いが、利回りの大きな低下を助長した理由は2つある。

  最初の理由は、利回りが短期間で大幅に上昇しており、投資対象としての米2年国債がここ数年なかったほど魅力的に見えたことだ。5%のリターンが2年間保証され、利回りが下がればキャピタルゲインも得られるチャンスは無視できない。もう一つは、SVB危機が米連邦準備制度の考えを変えるかもしれないことだ。

  景気の変調で米連邦準備制度が、利上げではなく利下げに突然転じると数カ月にわたり想定してきた投資家もいたが、これは常に非現実的だった。マクロデータはその性質上、展開していくのに時間がかかり、中央銀行がアプローチを調整できるのは状況が明らかになってからだ。

  利下げが遅れ必要以上にひどい不況に対処しなければならなくなるタカ派的なミスよりも、ハト派的なミス、つまり時期尚早な利下げでインフレが定着してしまうことをFOMCが懸念していることは明白だ。

  本当に金融政策の方向を反転させるには、金融安定に対する脅威が必要だ。よく言われるのは、米金融当局は何かが壊れるまで引き締めなければならないということだが、何かが壊れてしまった今、FOMCが方向転換する可能性ははるかに高くなった。

  このことは、ブルームバーグ端末のファンクション「WIRP=世界の金利予想確率」で作成されたフェデラルファンド(FF)金利予測の急変からも明らかだ。

The Market Pivots | Futures estimates for fed funds rates dropped almost 50bps on Friday

  WIRPのデータを別のアングルで説明したのが次のチャートだ。それぞれの線はFF金利の市場予想で、最も下の線はパウエル議長が2月1日に行った記者会見直後の予想だ。来年1月までにFF金利が4.5%を大きく下回ることを示唆している。

  一番上の線は今月7日にパウエル議長が議会で証言した後の金利予想。そして真ん中の線は10日時点のFF金利見通しだ。これまで想定していたよりも金利が幾分低くなるという見通しが表れている。

The Monetary Trajectory Shifts Again | More than half of the extra hikes priced in since Feb. 01 have been reversed

 

  オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場がすぐに示した反応は、来週のFOMCでの0.25ポイント利上げの可能性が圧倒的に高く、0.5ポイント利上げの可能性は排除してもよいというものだった。

  2Vリサーチのジェラード・マクドネル氏は、「レバレッジを効かせた金融機関がトラブルに陥ることは伝統的に、金融引き締めの一つの経路だ」と指摘する。

  銀行は預金を集めるために高い金利を提示しなければならなくなり、これは利益を圧迫するとともに融資の条件を厳格化させる。それによって金融環境が引き締まり、インフレ圧力が弱まるという仕組みだ。当局が銀行や預金者を救済しないというルールに重点を置けば、それは追加的なFF金利引き上げに代わるものになるかもしれない。

  ただ、そうすると米連邦預金保険公社(FDIC)が預金保険の対象としない25万ドル(約3330万円)を超える預金については、調査会社ヤルデニ・リサーチのエド・ヤルデニ社長が言うように、救済がほぼ確実な「大き過ぎてつぶせない銀行」や国債にシフトするリスクはある。

  要するにリスキーな状況だ。ただ、米連邦準備制度が銀行の破綻を金融政策の効果が発揮されている証左と受け止め、今後に必要と考える引き締めがより小さくなることはあり得る。

(ジョン・オーサーズ氏は市場をカバーするシニアエディターでブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。ブルームバーグに移籍前は英紙フィナンシャル・タイムズに在勤し、Lex Columnの責任者やチーフ市場コメンテーターを務めました。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:SVB Fallout Puts Fed Rate Pivot Back in Play: John Authers (抜粋)

This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

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2023-03-13 15:05:00Z
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