既報の通り、ソフトバンクは3月27日から5G通信サービス「SoftBank 5G」のサービスを開始する。同サービスに対応するスマートフォンも4機種、合わせて発表された。
3月5日、数回に分けて、同サービスに関するグループインタビューが開催された。対応者は菅野圭吾常務と寺尾洋幸常務の2人。菅野常務は端末や通信サービスに関する事項、寺尾常務は「5G LAB」を始めとするサービスに事項の質疑に応じた。
この記事では、筆者が参加したグループにおける主なやりとりを紹介する。
端末:Xperiaについては今後検討
―― (5G対応の)端末について、いろいろなバリエーションを考えたと思います。今回発表した4機種が、それぞれどのような位置付けなのかを教えてください。
菅野常務 大枠として、スペックから価格まで見た上で、「安定感のあるモノ」と「ちょっと新しいモノ」の2つの軸から、社内で議論をした上で(今回の4機種を)決めました。
私たちから見た時に、「AQUOS R5G」は安定してお客様に喜んでいただける端末だと思います。今回はコンテンツ(5G LAB)も一緒に発表していますが、それを十分に楽しめるものとして、LGの「V60 ThinQ 5G」を投入しました。
そして「新しいパートナーを呼び込もう」という観点から、OPPOの端末も採用しています。
―― (国内大手キャリアとしては初採用となる)OPPOは大きな注目ポイントかと思います。
菅野常務 OPPOとは、日本に参入した頃から議論を続けてきました。今回は5Gサービス用の新しい端末を投入するタイミングだったので、それに合わせて(Reno3 5Gの)採用を決めた次第です。
「新しさ」という面はもちろんですが、お客さまの手元にお届けしやすい、エントリーレベルの価格を目指しています。
―― どのくらいインパクトになりそうでしょうか。
菅野常務 私たちにとって(OPPOのスマホは)初めての挑戦なので、どのくらい売れるかは読めない面もあります。ただ、一緒に(販売を)拡大していこうという話にはなっています。
先を見通すと、私たちは早々に5G端末だけ(のラインアップ)になると思っています。その時に、価格競争面で強いメーカーとの話をしていく必要があると考えています。
―― そう考えると、4G端末ですが「LG G8X ThinQ」は安すぎましたよね……。あれは何なのでしょうか。(筆者注:同機種はソフトバンク直営店価格で税込み5万5440円というインパクトのある価格で登場した)
菅野常務 G8X ThinQは、ソフトバンクブランドとしては初めての「LG」を冠する端末でした。そういうこともあり、(LGブランドの端末を根付かせる意図を込めて)思い切った価格で販売した次第です。
―― 今回のラインアップでも、(認知を高めるために)そのような戦略を取るのでしょうか。
菅野常務 そこはメーカーの納入価格次第の面もありますから、そうなるかどうかは、まだ分かりません。
―― 今回、(ソニーモバイルコミュニケーションズの)「Xperia 1 II」がラインアップに含まれていないことが意外でした。何かあったのでしょうか。
菅野常務 (4G LTEに対応する)現行のXperiaはリリースしていますから、端末の採用については継続して協議している所です。SNSなどでも「ペリア(Xperia)がない」という反応があることは確認しています。
今回のスタート時点では、4社の端末でラインアップ上の「安定感」や「新しいもの」はハッキリと出せていると考えています。どのタイミングになるかは分かりませんが、Xperiaは「次回以降」に継続して出していければ、と思っています。
―― OPPOのReno3 5Gの発売予定が「7月下旬以降」です。夏モデルは、4G端末と5G端末の両方が出るイメージなのでしょうか。
菅野常務 そうです。今回の4機種は(SoftBank 5Gの)発表タイミングに間に合った機種でもあります。5G端末は随時拡充していこうと考えています。
―― 夏モデルにはまだ4G端末が存在するということでしょうか。
菅野常務 可能性はあります。
―― Reno3 5Gは5Gの開始に合わせて発表しただけという理解で良いでしょうか。
菅野常務 そうですね。夏モデルは他にも発表する予定です。
―― 5Gには「SoftBank Air」のような固定インターネット回線に対する代替ニーズがあると思います。完全な使い放題に近いものを提供できれば使いたいという人も多いと思うのですが、ネットワークの整備状況を踏まえて尚早だと判断したということでしょうか。
菅野常務 自分たちが言うのも何ですが、現状を踏まえると(スマホだけに絞ったラインアップは)最適解であると考えています。
―― 今回のスマホ4機種は全てSub-6(6GHz帯以下の周波数帯の5G)にのみ対応するものです。ミリ波(30GHz弱以上の周波数帯)はやらないのでしょうか。(筆者注:ソフトバンクは28GHz帯の5G基地局の開設計画も承認されている)
菅野常務 どのタイミングで(ミリ波対応の端末を)入れようか、社内で検討を進めています。
―― コンシューマー向けの端末にも入れるのでしょうか。
菅野常務 法人向け端末から対応する可能性はありますが、どこ向けと限って検討している訳ではありません。
―― 5Gサービスの開始に合わせて「トクするサポート+」を開始しますが、他社のように、残価設定型の分割払いを導入することは検討しなかったのでしょうか。
菅野常務 私たちのプログラムは、48回払いの割賦で24回目まで払えば(端末返却を条件に)残債免除という流れが、シンプルに機能しています。ユーザー満足度も高いので、3月27日発売の端末からプログラム使用料を無料とする形で継続することにしました。
料金プラン:エリア整備状況を鑑みて「アドオン」方式に
―― 今回、5Gサービスの料金プランはメリハリプランやミニフィットプランに1000円を上乗せするという形になりました。ある意味で「横滑り」ですが、メリハリプランの「1カ月50GB」という設定でも「5Gにしたらガンガン(容量が)減って足りなくなった……」といった満足感の落ちることにはならないという判断でしょうか。
菅野常務 こういう組み立てにした理由は大きく2つあります。
1つは、メリハリプランには「ギガノーカウント(動画SNS放題)」があることです。満足度調査を随時やっていますが、動画をメインで楽しむお客さまは、現状でも事実上“容量無制限”で使える状態にあり、満足いただけているようです。
もう1つは、5Gネットワークのエリアです。エリアがもう少し広がって(5Gサービスの恩恵にあずかれる人が増えて)から、将来的なプランを考えるべきだと考えています。
なので、今回はメリハリプランやミニフィットプランにプラス1000円という形(アドオン方式)としました。
―― メリハリプランなのですが、(ギガノーカウント対象外の)月間通信容量60GBにしなかったのはなぜですか。(筆者注:NTTドコモは「ギガホ」の月間通信容量を60GBとするキャンペーンを展開中で、5月からは「ギガホ2」利用者に絞ってそれを継続する)
菅野常務 私たちは動画(とSNS)の無制限があるので、Webブラウズを含めて50GBという設定で十分だと考えています。
ユーザーが使うコンテンツは、私たちから見ると想像以上に限定されています。もちろん、いろいろたくさん使う人もいますが、多くの人は動画を良く見ていて、(他キャリアにない)価値提案として(ギガノーカウントを)入れています。
―― 現状は1000円プラスのアドオンにしていますが、今後どうするつもりでしょうか。
菅野常務 先日の決算会見で宮内(謙社長)が言った通り、いわゆる無制限プランは検討していくことになると思います。
先ほども言った通り、そのタイミングは少し悩んでいる所ではあります。
―― プラス1000円の部分は(8月までの申し込みで)2年間は無料としています。この「2年間の間に様子見をする」という意図を込めたのか、それとも、様子見とは無関係に「取りあえず2年間」と設定したのか、どちらでしょうか。
菅野常務 後者です。「5Gサービスの開始記念に2年間無料のキャンペーンをする」という考えでやっています。
私たちとしては、ユーザーにより良い選択はどうあるべきなのか考えて、タイミングを見て(新しいプランを)検討したいと思っています。今のまま2年間続けるのは、現実的ではないと考えています。変わっていくものだと思います。
―― この先は「無制限」1本にしていく方向なのでしょうか。
菅野常務 コメントできる形にはなっていませんが、ソフトバンク(ブランド)では現在、メリハリプラン、ミニフィットプラン、「スマホデビュープラン」の3つにプランを絞り込んでいます。その上で、(サブブランドの)Y!mobileに「スマホベーシックプラン」を用意してすみ分けを図っています。
料金プランを分かりやすくシンプルにしていく必要があるとは考えていますが、現状のラインアップでもある程度満足して選んでいただけています。さらにプランを絞り込むのかどうかは、議論が必要です。
―― どういうプランが出てきたとしても、「4G/4G LTE向け料金プランが基本にあって、5Gサービス利用時はそれにプラス○○円」という設計になるのでしょうか。
菅野常務 現在、料金の組み立ても検討しています。
―― すごく素朴な疑問なんですが、「ウルトラギガモンスター+」はなぜ「メリハリプラン」に改称されたのでしょうか。
菅野常務 意外とウルトラギガモンスター+が知られていないんです……。
まず名前が長すぎるということがあります。そして、Web検索のキーワードでも引っかかりづらいということもあります。
―― Y!mobileブランドの5Gサービスはいつから始める予定でしょうか。
菅野常務 現時点では未定です。当面の間はソフトバンクブランドで5Gサービスを展開します。
5Gサービス:SIMカードは「シンプル化」していく
―― ソフトバンクの4G/4G LTEサービスは、端末や契約形態によってSIMカードが細分化されていて、例えば「iPhoneからAndroid」「AndroidからiPhone」といった機種変更でも(他キャリアにはない)SIMカードの交換を強いられます。
5Gサービスでは「どの端末でも同じSIMカード」にするのでしょうか。
菅野常務 管理をシンプル化する観点で、そのようにする方向で動くことになると思います。
―― 5Gエリアの拡大はどういう風に行っていくのでしょうか。
菅野常務 既存の(LTE/4G/3G)向けの周波数を使えるようになれば、エリア化の速度は上がると思います。
―― Reno3 5G次第な面もありますが、5Gスマホの端末価格のレンジは若干高めに見えます。今後、これは下がる見込みはあるのでしょうか。
菅野常務 価格の感覚にもよるとは思いますが、私たちの見立てでは(平均価格は)下がっていくという見立てです。少し時間を要するかもしれませんが。
5G LAB:ソフトバンク×ヤフーのシナジーを生かす
―― 5G LABのコンテンツはどのくらいの期間で、どのくらいの規模で増やしていくのでしょうか。
寺尾常務 私たちは元々、「スポナビライブ」「バスケットライブ」といったコンテンツを運営していました。これらを担当していたチームや、ヤフー、そのグループ企業であるGYAOが一緒になってコンテンツを作っていこうという話になっています。
(ヤフーが運営する)「スポーツナビ(スポナビ)」はテキストメディアですが、高校野球を皮切りにライブ中継を組み合わせる取り組みを始めました(参考リンク)。ライブ中継をすると、メディアにユーザーが集まります。無料コンテンツと有料コンテンツをうまいこと組み合わせることもできると思っています。
従来のメディアと、多視点動画やVR(仮想現実)やAR(拡張現実)といった付加価値系のコンテンツサービスを両方うまく作っていくことで継続的なサービスを提供できるのではないかと考えています。
私自身は今までY!mobileを担当してきて、ヤフーとの関係は構築できています。そのリソースをうまく活用すれば、従来はリクープ(回収)しづらかったコストの案分もしやすくなって、うまく行くのではないかと。
―― チーム全体として作ったものの中に、5G LABの多視点動画などのコンテンツもあるというイメージでしょうか。
寺尾常務 そういうことになります。作り出した1つのコンテンツをうまく切り取り、いろいろな人や場所で使われることによって、幾つかのお金(収入)に変えることもできます。
コンテンツの調達にはお金が掛かるので、仕組みがうまく働けば、調達もしやすくなるでしょう。
―― 先日、AKB48とVRライブ配信に関する取り組みを行いました(参考リンク)。5G LABでもそれを継続するようですが、AKB48の効果はいかほどのものなのでしょうか。
寺尾常務 効果は高いと思います。数値としてはまだまだですが、わざわざ劇場に足を運ぶファンの皆さんは強いです。
VRグラスや視聴券をセットにした「お土産キット」を用意しているのですが、かなり売れています。購入後、それを試している人も多くいます。
―― 新型コロナウイルスの影響で、スポーツでは「無観客試合」、演劇でも「無観客公演」が増加傾向にあります。無観客で行われるもののVRコンテンツを作るのはどうでしょうか。
寺尾常務 現状の悩みは、試合や公演自体をやるのかやらないのか分からない、ということにつきます。
念のため、無観客試合などが増えることを想定して、(配信の)設備増強は始めています。
―― 5G LABは「AR」「VR」「FR(多視点)」「GAME(クラウドゲーミング)」の4つで構成されていますが、今後も4つだけなのでしょうか。
寺尾常務 もっと広げることもあるでしょうし、お客さんの反応によっては見直すこともありえます。
技術の進歩が、映像制作の世界をどんどん変えています。今日の発表会では、たくさんのカメラマンが撮影に入っていますが、人(カメラマン)がいらなくなる世界観が見えつつあります。顔認識技術を使って、特定の人を追いかけ続けられる「AIカメラ」も出てきています。
ライブで10人程度を追っかけて撮影するくらいなら、置きっぱなしのAIカメラで事足りるかもしれません。そうなると、カメラマンとその助手が省けるでしょうし、場合によってはスイッチャー(カメラの切り替えをする人)も不要になるかもしれません。
そういう意味では、技術の進歩によって、コンテンツの幅が広がることは十分に考えられます。複合メディアも生まれるかもしれません。「
―― 人手のいらない撮影、ということも考えられるのでしょうか。
寺尾常務 福岡PayPayドーム(旧名「福岡ドーム」)にも40台のカメラを設置して、(多視点撮影などの)インフラを整えました。これを野球以外の用途に使うことは“あり”だと思っています。バスケットボールリーグであれば、ホームアリーナのあるチームなら、そこに設備を入れればいろいろな面で活用できます。
ソフトバンクには法人営業もあるので、カメラやインフラをパッケージ化して提供することも考えられると思います。そうなれば、野球やバスケだけではなく、サッカーなどいろいろなスポーツや催しに活用できます。
―― 4つの要素の中で、GAMEを担う「GeForce NOW Powered by SoftBank」だけは、料金面を含めて別立てという扱いです。実際に、どのくらい実用的にゲームできるものなのでしょうか。
寺尾常務 格闘ゲームなどで“フレーム単位”を競うと厳しいです。一方で、レンダリングエンジンをガンガン回すものには強いです。
―― 5Gとそれ以外の通信ネットワークで、違いは出てくるのでしょうか。
寺尾常務 最終的にはレイテンシー(遅延)の面で差が出てくると思います。現行の5GネットワークはNSA(ノンスタンドアローン)構成なので、レイテンシーにおいて現状の4Gと大差ありませんが、SA(スタンドアローン)ネットワークになれば遅延量を小さくできます。
それでも、本当にフレーム単位で戦うものに耐えられるかというと、微妙かもしれません。
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2020-03-05 13:22:00Z
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