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「接触確認アプリ」を「なんか信用できない」と思う人に「26のイエスとノー」で答える - ITmedia

 6月19日、日本でも新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に対する「接触確認アプリ」(COVID-19 Contact Confirming Application、通称「COCOA」)が公開された(iPhone版リンクはこちら)。

photo iPhone版接触確認アプリ

 このアプリに関するAppleとGoogleの共同コメントを得られた。以下に紹介する。

日本の新たな生活様式の下でCOVID-19の拡大抑制を図るために、厚生労働省が提供開始した新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」 をAppleとGoogleは支援致します。同アプリは、AppleとGoogleのプライバシー保護技術を活用しており、利用するか否かは利用者が自由に選択でき、デバイスの位置情報を収集・使用することもありません。AppleとGoogleは今後も厚生労働省及び日本政府の取り組みを支援して参ります。

 公開されたばかりということもあり、その内容をちゃんと理解している人はまだ少ない状況だろう。そこで、公開情報をもとに、その特質や価値などを、シンプルに「イエス・ノー」を基本に答えていきたい。全体を見ると、このアプリの位置付けがよく見えてくるのではないだろうか?

そもそもどんなアプリ?

利用は強制ですか?

  • ノー。自主的な判断で利用します。

 日本の場合、アプリのインストールは「強制」ではない。他国では、海外からの入国者やCOVID-19の罹患が明確な人の位置を把握するためにアプリの利用を強制に近い形で進めている場合もあるが、このアプリはそういう性質のものではない。

メールアドレスや電話番号、名前・住所の登録は必要ですか?

  • ノー。一切不要です。

 後述するが、位置情報を含む個人のプライバシーに関わる情報は一切記録しないし、ネットワークにもアップロードしないので、いわゆる「ユーザー登録」はなく、アプリのインストールだけで終わる(ただし、自分がCOVID-19感染に関する検査で「陽性」と判断された場合には情報入力がある)。

photo プライバシーに関する記載

他の国、例えば中国や韓国で使われたアプリ、シンガポールで使われたアプリと同じものですか?

  • ノー。ただし、ドイツやイギリスなどが同様のアプリを導入しています。

 今回のアプリは、3月にシンガポールが導入した「TraceTogether」というアプリに着想を得て作られている。しかし、その後にAppleとGoogleが共同で開発・公開したフレームワークに基づき、より厳密なプライバシー保護を軸に開発されている。ドイツはすでに同じフレームワークによるアプリを公開済みで、イギリスも導入すると発表した。ただし、国によって方針は異なるため、アプリを使うといっても、そこで集める個人情報の考え方や機能は異なる。

国やスマホメーカーに自分の居場所・移動先を知られてしまうのでは?

  • ノー。個人情報は記録していないし、ネットワークにもアップロードされません。

 今回のアプリでは、「誰かと1m以内の距離を保ち、15分以上の時間が経過した」時に、相手の情報をスマホの中だけに記録する。その人が罹患しているか否かは問わない。

 その際には、「相手の名前や各種ID」「相手といた場所」「相手といた時間」などは記録されない。「ある識別子(人を見分けるために必要な、匿名性を保った情報)を持つ人と濃厚接触した」という情報のみが記録されている。後日、ネットワーク上にある「COVID-19陽性と登録した人の識別子」とスマホの中で照合することで、濃厚接触した可能性を通知する仕組みだ。

 個人情報はネットワークに出ていかないし、位置情報を含む個人の行動履歴も記録されていない。

photo 識別の仕組み

GoogleやAppleが作ってるんですか? 「Microsoft製」って報道もありましたよね?

  • どちらもノー。日本のエンジニアが中心になって作ったオープンソースのアプリをベースに、日本国内の企業である「パーソルプロセス&テクノロジー」が開発しました。

 今回のアプリの核になっている技術は、エンジニアたちがボランティアとして集まったオープンソースプロジェクト「COVID-19 Radar Japan」のものだ。さらに、GoogleとAppleのフレームワーク技術をもとに作られている。

 しかし、最終的には厚生労働省が日本国内のITベンダー「パーソルプロセス&テクノロジー」に開発と運営を委託して開発された。そこにMicrosoftも技術支援の形で参加している。

海外でも使えますか?

  • 今はノー。日本国内のみが対象です。

 アプリは「各国の保健衛生機関」が「1国1アプリ」の形で出すことになっており、日本では厚労省が作った「COCOA」がそれ。現状では国をまたいでの検出や通知にはフレームワークも対応していない。

どんなスマホでどんなふうに動くのか

最新のスマホでないと動きませんか?

 できる限り多くのスマホで動くよう、最新のスマホの性能を求めないように開発されている。

最新のOSでないと動きませんか?

  • iPhoneに関してはイエス。Androidについてはノー。

 iPhoneとAndroidで動作するが、両者では技術的な条件から、動作の前提が異なる。

 iPhoneで使う場合には、「iOS 13.5」以上を利用している必要がある。要は最新のバージョンであればいい。

photo iOS 13.5で対応した

 Androidの場合には「Google Play開発者サービス」を使うため、このアプリをGoogle Playで最新版にアップデートしておく必要がある。必ずしも最新のOS・最新のハードウェアである必要はない。厚生労働省は「Android 6.0以上」としているが、動作検証機種のリストはのちほど公開される。

photo Google Play開発者サービス

 なお、将来的にはiOS・Androidともに、OSにこの機能を搭載する方向で検討が進められており、「アプリをインストールする必要がない時期」も来る可能性が高い。ただしその場合にも、利用はあくまで個人の判断に基づくものなので、「自分で明示的に、機能をオンにする」必要がある。

ガラケーや高齢者対象の「らくらくホン」にも入りますか?

  • スマホでないもの、という意味ならノー。ただし、OSがAndroidをベースとし、Google Playからアプリをダウンロードできる「比較的新しいもの」なら使える可能性が高い。

 上記のような条件なので、「Google Play」「Google Play開発者サービス」が使えれば問題ないはずだが、正確なところは、メーカーなどの検証を待つ必要がある。

Google Playを搭載していないファーウェイのスマホで使えますか?

  • 今はノー。

 「Google Play開発者サービス」に依存するため、Google Playを搭載しない「Huawei Mobile Service(HMS)」を使う最新のファーウェイ製のスマホでは利用できない。ただし解決策を検討中という。

利用にGPSは必要ですか?

  • 純技術的はノー。ただしBluetoothは必要なので、「位置情報の取得」はオンにする必要があります。なので、スマホの上での「GPS動作」はオフにしないでください。

 位置情報を記録しないのでGPSは使わない。だが、Bluetoothを使って「接触確認」を行う作業は、Bluetoothを使った「位置情報取得」に使われてきた技術なので、GPSを切る目的で「位置情報の取得」をオフにすると、アプリが使えなくなる。

消費電力が爆上がりするんですよね?

  • 技術的にいえばノー。多少は上がるが顕著ではないでしょう。

 接触通知アプリはBluetoothを使うが、そこで使うのはヘッドフォンの接続などに使うものではなく、「Bluetooth LE(Low Energy)」と呼ばれる、非常に消費電力の低い通信方式。そのため、劇的に消費電力が上がるとは想定しづらい。AppleやGoogleは技術開発の面で省電力化を強く志向しており、その点でも配慮はなされた。

 だが、アプリは現状「プレビュー版」であり、消費電力が「まったく上がらない」とは断言できない。

通信費はかかる?

  • 基本的にはノー。

 インストールや陽性についての告知に通信を使うが、それ以外では基本的に通信を行わないので、データ通信量が多くなることはない。

どんな機能がついているのか

常に操作していなければいけないんでしょうか?

  • ノー。アプリをインストールして立ち上げたあとは基本的には放置しておき、通知があったら見る程度で十分です。

 インストール後、操作は特に不要。「通知」や「位置情報の取得(これはBluetoothの利用に関してのもので、GPSのことではない)」などの許諾は必要だが、日常的には操作の必要はない。

 「陽性が疑われる人との濃厚接触が記録されていた」場合など、いくつかの場合に「通知」が出るが、その時に操作するだけでいい。

「ソーシャルディスタンスを保っていない」ことを警告してくれますか? また、感染者の接近を警告してくれますか?

  • どちらもノー。

 リアルタイムに利用者になにかを通知したり、警告したりする機能はない。そういう性質のアプリではない。

一瞬でも感染者に近づいたら記録されるの?

  • ノー。「15分以上・1m以内の距離を維持したとき」のみが記録されます。

 前出のように、「15分以上・1m以内の距離を維持したとき」を検出するアプリなので、その条件を満たさない、短時間の接触は記録されないし、警告もない。

「どこへ行ったから濃厚接触があった」「いつ濃厚接触があった」かが分かりますか?

  • ノー。「濃厚接触があった可能性」だけが分かり、日時・場所は分かりません。

 個人情報は記録されないので、通知からも「濃厚接触があった」こと、「これまでに何件そういう疑いがあったか」は分かるが、日時や場所は分からない。それがプライバシー侵害や疑心暗鬼を生み出す可能性があるからだ。

COVID-19に罹患したら、自動的に教えてくれるのですか?

  • ノー。自分で医療機関や保健所から認定を受け、その上で情報を「自分で通知するために入力」します。

 自分の健康状態を把握する機能は一切ない。ただし、どのような時に医療機関に相談すべきか、どのように自宅で静養する判断をすべきか、といった情報提供への窓口にはなっている。

 検査などを経て自分が「陽性である」と分かった場合には、自分の判断に基づき、その情報を登録・アップロードすることになっている。

photo

「陽性申請」では、名前や住所・電話番号を記録・通知しますか?

  • ノー。そうした個人情報は一切記録しないし、通知もしない。

 陽性疑いの申請はあくまで「アプリでの利用」を前提としたもので、名前や住所・電話番号を記録・通知しない。そのため、アプリを介して誰かに「自分がCOVID-19の陽性と判断された」ことが伝わることもない。

「陽性だったことの申請」は義務・強制ですか?

  • ノー。個人の判断に委ねられています。

 アプリの利用が「個人の判断に基づく」ものであるのと同様に、「陽性だったことの申請」もあくまで個人の判断に基づく。

アプリを使うと、自分が罹患したことを、知人や周囲の人に知られてしまうのでは?

  • ノー。完全に匿名です。ただし、「陽性者との接触通知があった」ことから、周囲の人を疑い出す人は出てくる可能性があります。

 前述のように、アプリでは個人名などは一切記録されないし、場所も記録されていない。そのためアプリの通知からは「濃厚接触が疑われる事例があった」ことだけが分かる。

 しかし、そこから邪推して「あの人か」「あの時か」などと考える人は出てくる危険性がある。そうした考えが、人や場所の差別や混乱の助長につながらないよう、十分に注意したい。

アプリをどう使ってもらうのか

体調が悪くなってから使えばいいですよね?

  • ノー。むしろ「今」使ってください。

 自分が感染を伝えるためではなく、「周囲にどのくらい陽性者が増えているのか」「陽性者との濃厚接触が増えた時にどう活動すべきか」という起点になるアプリ。だから、自分が陽性と疑われるときだけでなく、自分の体調が万全な時にも、周囲と協力する形を作るのが望ましい。そうすることで、第2、第3の感染拡大期の混乱を小さくすることができる。

100%確実に陽性疑いの人との濃厚接触を検知できるんですか? 誤検出はありますか?

  • 100%の精度で、という意味ならノー。誤検出はありうる。

 単に「近づいたこと」を記録するので、感染の可能性がまずあり得ない環境でも「濃厚接触疑い」として記録する。また、Bluetoothの電波が届かない状況も想定されるが、その場合、近くに長時間いても記録されない。

 何より、陽性が疑われる人がスマホを持っておらず、アプリも使っていない時の濃厚接触は検知できない。

通知が来ていないということは、「自分は感染していない証明」と考えていいですよね?

 あくまで「このアプリを使っている陽性疑いの人との接触がなかったと思われる」ことが示されるだけで、あなたの感染の有無を判断するものではない。「陰性証明」のような形でアプリを使うことは間違いだ。

全国民の6割がインストールしないと効果が出ないんですよね?

  • 正確にはノー。しかし、多くの人々がインストールして使っている状況が生まれる必要があるのは事実で、ハードルは低いものではありません。

 多くの報道では、この種のアプリについて「全国民の6割がインストールしないと効果が出ない」とされている。この根拠として使われているは、オックスフォード大学で病理菌動態学関連の研究を手がける、クリストフ・フレイザー教授の研究グループが米科学雑誌Scienceの2020年3月号に寄稿した論文だ。

 とはいえ、現実問題として、人の行動範囲は決まっている。多くの人はそこまで広くない、同じような地域を毎日移動しているものだ。だとするならば、「その地域でどれだけの人が使っているか」という判断によって、アプリの実効性は大きく変わってくる。

 日本全体で平均をとって6割を目指すのではなく、感染がまだ落ち着いていない都市部での利用拡大を先に推進する、という考え方もあるだろう。スマホの利用率も地域によってばらつきがあるのが実情で、「日本のスマホ普及率は6割強だから、6割の人が同じアプリを使うのは無理がある」というのも、利用状況を考えるとズレた論だ。

 そもそも、一部の国で導入されたアプリとは異なり、「陽性者の移動制限」や「厳密な位置管理」を行うものではなく、即効性のあるものとはいえない。「アプリを使う」のは同じだが、同列に語るのは難しいのだ。

 1割・2割の利用率で厳しいのは間違いなく、アプリ利用を促進する施策は必要になる。そもそも、強制力がない時点で「数週間で国民全員が使うアプリになる」と言うのは、過去の事例から見てもナンセンス。数カ月かけて普及を目指し、あくまで「次の感染拡大期に備える」と考えるのが妥当だ。

即効性がなく、何も確実じゃないのなら、結局効果がなくて、アプリなんて無駄なんじゃないですか?

  • それはあなたの行動で決まります。

 ここまで述べてきてお分かりのように、非常にリスクが低いアプリにすることを多くの人が検討した上で作られている。

 「胡散臭(うさんくさ)い」「即効性がなくて意味が薄い」という意見はよく分かるが、その意識が、作ったアプリを無駄にすることにもつながる。リスクが低いことを勘案し、できるだけ多くの人が利用し、その上で問題を洗い出してより良い状態を目指す必要がある。

 助け合い運動が「無駄」だとは、筆者には思えない。

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2020-06-19 06:40:00Z
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