九州の鉄道路線をまたも自然災害が襲った。7月3日からの活発な梅雨前線による大雨により、熊本県八代市と鹿児島県霧島市を結ぶJR肥薩線や、人吉盆地を走る第三セクター「くま川鉄道」の線路が被災。球磨川にかかる橋梁の流出といった甚大な被害が出ており、復旧に相当な時間がかかる見通しだ。 【写真】肥薩線を走る観光列車「かわせみ やませみ」と「いさぶろう・しんぺい」 国土交通省や熊本県によると、肥薩線は1908年完成の球磨川第一橋梁(鎌瀬―瀬戸石間)、第二橋梁(那良口―渡間)が増水によって流されたほか、複数駅で線路が冠水した。
くま川鉄道は人吉温泉駅(JR人吉駅)に停車していた同社保有の車両5両すべてが浸水。同駅から延びる湯前線の球磨川第四橋梁(川村―肥後西村間)も流出した。「産交バス」人吉営業所では多数のバスが水没。「肥薩おれんじ鉄道」でも土砂流入や線路冠水の被害が出た。 ■SLも走る観光路線 肥薩線は八代―隼人間の全長124.2kmに及ぶ路線。全線が非電化のため、エンジンのうなりをあげながら勾配を上るディーゼル車が活躍している。現在ひなびた雰囲気の路線だが昭和初期まではこちらが鹿児島本線だった。
八代―人吉間は、球磨川沿いを縫うように走る「川線」と呼ばれ、風光明媚な車窓が続くため、JR九州が熊本から複数の観光列車を走らせている。「SL人吉」や特急「いさぶろう・しんぺい」のほか、2017年には特急「かわせみ やませみ」が仲間に加わった。地元の特産品を使った商品の車内販売や客室乗務員によるフォトサービスが利用客に評判だ。 観光の拠点となる人吉の駅周辺には、転車台、石造りの機関庫といったSL関連の見どころや、肥薩線の歴史を伝える鉄道ミュージアムがある。国宝の「青井阿蘇神社」もすぐ近くだ。球磨焼酎や温泉を目当てに同地を訪れる人は多い。
一方、人吉―吉松間は「山線」と呼ばれ峠を越えるループ線やスイッチバックが鉄道ファンに人気だ。川線とともにクルーズトレイン「ななつ星in九州」の運行ルートにもなっている。吉松には都城とつながる吉都線も乗り入れ、鹿児島中央からは臨時特急「はやとの風」が運行している。 JR九州管内では、2016年4月の熊本地震により、熊本と大分を阿蘇経由で結ぶ豊肥本線で大規模な土砂崩れが発生。いまも肥後大津(熊本県大津町)―阿蘇(同県阿蘇市)間の不通区間が残っているが、今年8月8日の全線再開に向け、7月21日に試運転を始めると発表している。
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2020-07-06 20:02:10Z
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