暗号取引所FTXの創設者、サム・バンクマン=フリード。
Tom Williams/Getty Images
- サム・バンクマン-フリードと彼の仮想通貨取引所FTXが崩壊した。
- 巨額の損失に加えて、連邦政府による捜査の可能性などが取り沙汰される事態となっている。
- FTXの破綻は、より大きな仮想通貨(暗号資産)の崩壊が迫っているという恐怖を煽るものでもあった。
11月第一週に金融界に注目していた人は、アルファベット3文字の言葉を調べていたのではないだろうか。SBF、FTX、FTT。もしかしたら、SECも。
もうすでに何のことかわからないかもしれない。
簡単に説明すると、サム・バンクマン-フリード(Sam Bankman-Fried:SBF)と彼が設立した会社のFTXが見事に崩壊し、彼は純資産の94%とCEOの肩書を失い、彼の暗号帝国が破産を申請する結果となったということだ。
しかし、仮想通貨市場全体に影響を及ぼす可能性を含め、この出来事にはまだ多くのことが隠されている。何が起きたのか、そしてそれが何を意味するのかを解説しよう。
サム・バンクマン-フリードとは何者で、FTXとは何なのか
シリコンバレー出身でMITを卒業したサム・バンクマン-フリード(略してSBFとしても知られている)、慈善活動の世界やマーケットメーカーのジェーン・ストリート(Jane Street)での経験を経て、2017年に暗号取引会社アラメダ・リサーチ(Alameda Research)を立ち上げた。
その2年後、SBFと彼のチームは、トレーダー向けに安い取引手数料や高度なオプションなどの特典を備えた暗号交換プラットフォーム「FTX」を立ち上げた。ブルームバーグによると、FTXとアラメダはは2020年だけでそれぞれ3億5000万ドルと10億ドルの利益を上げ、バンクマン-フリードは大金持ちになったという。
バンクマン-フリードの純資産はピーク時には260億ドルだったが、11月初めには160億ドルまで減少していた。30歳のとき、彼はすでに主要な政治献金者となり、トム・ブレイディ(Tom Brady)やジゼル・ブンチェン(Gisele Bündchen)といったセレブにFTXを宣伝させ、NBAのマイアミ・ヒートがプレーするアリーナの命名権を獲得していた。
何が起こったのか
11月初旬、コインデスク(CoinDesk)は、バンクマン-フリードの帝国の安全性を疑問視する爆弾のようなレポートを発表した。
アラメダとFTXは別会社であるにもかかわらず、アラメダの資産のほとんどがFTXが開発した仮想通貨FTTに結びついていることが報じられたのだ。技術的には何も問題はないものの、FTXの流動性には疑問符がつくとCoinDeskは報じている。
その数日後、FTXの最大のライバルであるバイナンス(Binance)のCEO、チャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao、趙長鵬)が約5億3000万ドル相当のFTTを手放す決定し、事態はさらに悪化した。そのほかの顧客も慌てて引き出しにかかり、FTXには72時間の間に推定60億ドル分の引き出しが殺到した。
FTTの価値は32%急落したが、11月8日にバンクマン-フリードが、バイナンスがFTXを買収して事実上救済するとサプライズ発表したことで再び上昇した。
ではなぜ、 FTXはまだ問題を抱えているのか
11月9日、バイナンスはデューデリジェンス中に発見した、顧客資金の誤処理とそれに伴う連邦政府による捜査の可能性を理由に、この取引から手を引くと発表した。
このニュースにより、FTTはさらに急落し、バンクマン-フリードは1日で純資産の94%を失った。
資金繰りに窮したバンクマン-フリードは、コインベース(Coinbase)のCEO、ブライアン・アームストロング(Brian Armstrong)を含む業界のライバルたちに救済を求めたが、無駄だった。11月11日、FTXは連邦破産法第11条の適用を申請し、バンクマン-フリードはCEOを辞任した。
なぜ、こんなことになったのか
バンクマン-フリードは一連のツイートで「2回失敗した」と述べ、FTXの崩壊は顧客の引き出しが多かったことと、FTXが負った負債の額について自身の見積もりが間違っていたことが原因だとした。
しかし、ロイターの報道は、他の要因があったことを示唆している。ロイターは匿名の情報源を引用して、2022年初め、アラメダが損失を被った後、バンクマン-フリードは誰にも告げずにFTXからアラメダに顧客の資金を移したと報じている。
FTXは、Insider社のコメント要請に応じていない。
他にどのような影響を与えるのか
FTXは、ソフトバンク・ビジョン・ファンド、タイガー・グローバル(Tiger Global)、セコイア・キャピタル(Sequoia Capital)、ブラックロック(BlackRock)などの著名な投資家に支えられていた。しかし、セコイアはFTXへの投資額を0ドルにすると発表した。この有名なベンチャーキャピタルはFTXに総額2億1350万ドルを投資していた。
バンクマン-フリードにはインナーサークル、彼とバハマで一緒に暮らしてFTXとアラメダを運営していた10人のグループがある。コインデスクによると、このグループは彼の大学時代の友人や元同僚で、バンクマン-フリードの帝国に深く関わっていたという。だから、彼らも今、大きな損失を被っているだろう。
「FTXにすべての貯金を預けていた社員もいた」と、ある匿名の社員はコインデスクに語っている。
「何も問題ないと信じていたんだ」
FTXの破綻が意味するのは何か
5月に2兆ドルの暴落に見舞われるなど、仮想通貨市場にとって2022年は大変な年になっている。
そして今、FTX破綻のショックはこの業界全体に波及している。CoinMarketCapによると、これはこのセクターの価値を1日で12%下落させ、新たなリーマンショックが訪れるのではないかという懸念をかき立てた。
業界の専門家はInsiderに対し、この騒動は規制当局が暗号業界を取り締まろうとしたり、大手銀行が顧客に仮想通貨を取引させることに警戒心を抱かせたりするかもしれないと語った。さらに、FTXのメルトダウンは業界の信頼をさらに失墜させ、人々が恐怖心によって暗号資産から資金を引き揚げる可能性があり、専門家はこれを「感染」と呼んでいる。
JPモルガンのアナリストは11月9日に、仮想通貨の清算が近づいているようだと書き、専門家は投資家に備えるべきだと警告している。
Bankrate.comのアナリスト、ジェームズ・ロイヤル(James Royal)は11月11日にInsiderに対して、「投資家としては、何に投資しているのかを真剣に考えるべきだ。週末のうちに消えてしまうかもしれないのだから」と述べた。
「価格は完全に暗号の未来に対するセンチメントと信念に基づいている......。その信念が消えれば、何も残らないだろう」
(翻訳・編集:Toshihiko Inoue)
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2022-11-14 01:45:00Z
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