
日本もいよいよ、新型コロナウイルスに対する緊急事態が宣言される局面を迎えようとしている。経済に対する打撃は免れないが、日本より先に新型コロナの泥沼に陥った米国からは、「ロックダウンで国民の行動を制限するしかない」という声が上がる。感染拡大が顕著な米ニュージャージー州で、感染症専門医として勤務する日本人医師・斎藤孝氏に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)
――現在の状況を教えてください。
700床ぐらいの大学病院で、感染症の指導医(臨床と研究を通じて医学生などを教育する医師)という立場で新型コロナの患者をみています。これまでのところ、呼吸困難で酸素吸入は必要だが、人工呼吸器を使うまでには至らない初期段階の症状なら、ヒドロキシクロロキンとアジスロマイシンなど、ある程度効く薬があると分かりました。
しかし一度重症化したら、薬はほとんど効果がありません。治験段階の薬はいくつかありますが、どれも正直なところ大きな効果は見られてない。中国や欧州から研究レポートがどんどん上がってきているのですが、どの研究でも重症化した段階での薬や治療法には決め手が見つかっていません。このウイルスの重症化のメカニズムは、まだはっきりとは解明されていません。
そうなるともう対症療法しかない。呼吸困難になったら人工呼吸器に繋いで、それでもだめなら体外式膜型人工肺(ECMO)を使って、治すというよりも症状をなんとか緩和する。その後は患者の治癒力頼みです。そして残念なことに、人工呼吸器に繋いだ患者で「戻って来た」人はほとんどいない。
――「戻る」とは回復するという意味ですか。
人工呼吸器を外して自分で呼吸できるようになる、という意味です。回復するかどうかは別の問題です。戻って来られた患者はほんの一握り。特にお年寄りは、ほとんどがそのまま亡くなります。重症化してから亡くなるまでの時間は、1週間程度です。この1週間というのも、ICU(集中治療室)の医師が何とか持たせた結果です。もし人工呼吸器やECMOがなければ2、3日で亡くなると思います。
そして、まったく重症化していなかったのに、ごく短時間で症状が激変して亡くなる人もいます。私が覚えている例では、ICUではない通常の病室にいた患者で、サチュレーション(動脈血酸素飽和度、血液の中の酸素濃度を指す)が急激に下がった人がいます。すぐに人工呼吸器をつけようとなったのですが、その間に亡くなってしまいました。さっきまで起きて新聞を読んでいたような人が、1~2時間で亡くなったのです。これを予期するのは非常に難しい。今はとにかく血圧やサチュレーションを3~4時間おきにこまめに調べていますが、それでもすべては予期できない。
● 「面」で対処するしか選択肢はない
――その最前線から日本に対しては、何を提言したいですか。
緊急事態宣言、そしてロックダウン(都市封鎖)のような措置をすぐやるべきです。日本はここまでのところ、クラスターという感染の「点」を把握してそれを封じ込めようと考えてきましたよね。でも医療現場の実感でいえば、それは非常に難しいです。新型コロナは感染力がめちゃくちゃ強く、重症化したらかなりの確率で死にます。
ですから、ロックダウンで「面」として国民の行動を制限し、短期間で爆発的に感染拡大することをなんとか阻止する。これが何より重要です。長期的には相当数の国民が感染していくとしても、その勢いをとどめなければ、日本全国の病院に新型コロナの患者が一気に増えるおそれがあるのです。
日本では米国や欧州の惨状と比べて、「われわれは感染者数も死者数もはるかに少ない。新型コロナ対策に成功している」と楽観視する向きが強いように思います。しかし新型コロナの威力を目の当たりにしている医師からすると、その楽観姿勢には極めて強い不安を感じます。今でも日本では電車通勤が普通に行われていて、学校の授業も再開されようとしているそうです。この状況ではクラスターどころではなく、不特定多数が日常的に感染リスクにさらされます。
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2020-04-06 21:05:45Z
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