政府は5月31日に「新しい資本主義」実行計画案と「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)」原案を公表した。岸田文雄首相の経済政策スタンスを巡り、当初の分配重視から成長重視へ軌道修正されたとの見方がエコノミストらから出ている。
新しい資本主義
ピクテ投信投資顧問の市川眞一シニア・フェロー(5月31日付リポート):
- 岸田首相に変身の兆し、経済政策は政権発足から7カ月で大きく変容した
- 首相は5月の英国講演で、新しい資本主義を「資本主義のバージョンアップ」と定義。課題に挙げた分配の目詰まり解消や過少投資の克服など4つの項目は、第2次安倍政権初期の成長戦略に極めて近い
- 分配を重視しつつも、市場機能を活用して経済成長を促す新自由主義的イメージの強いものだった
- 変容した背景には日本経済の現実があるのではないか。経済の効率性を高め、生産性の向上を図らなければ分配の原資が確保できないだろう
大和証券の末廣徹シニアエコノミスト(1日付リポート):
- 実行計画は成長戦略重視に回帰した総花的な内容。「分配」と 「貯蓄から投資へ(資産所得倍増)」は相性が悪いため、今後のメッセージが重要
- 当初のイメージとは大きく変わった。スタート時に感じられたコンセプトと比べると、前政権までの「成長戦略」にかなり近い着地となった印象
- 「貯蓄から投資へ」に必要な処方箋は将来不安の削減と着実な成長、潜在成長率の底上げとデフレ脱却が正しい処方箋
新資本主義は金融市場も重視、NISA拡充やPTSで非上場株売買
骨太の方針
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミスト(1日付リポート):
- 岸田政権の経済政策が所得再分配から成長重視へと軌道修正されたことを示しているが、日本経済が抱える問題の本質は分配の不平等ではなく潜在力の低下にあるため、軌道修正は評価できる
- 経済政策は良い方向に転じてきていると考えられるが、財政拡張傾向が強まり財政規律がさらに低下してしまうリスクが大きな懸念材料として浮上
- 財政健全化へ再び政策を進めるべき時期に、ウクライナ問題を理由に拡張重視にかじを切ろうとする政府の姿勢は成長戦略の効果を損ねてしまう
- 各施策は歳出歳入の一体改革を進め財源を確保して実施することが重要。いたずらに新規国債発行で賄えば成長戦略としての有効性を自ら損ねる
第一生命経済研究所の星野卓也主任エコノミスト(1日付リポート):
- 経済優先のトーンが強まり、財政再建目標の優先順位は低くなった
- 最大の特徴は、さまざまな分野において中長期的・計画的な財政支出を行う旨が明記された点
- 中長期的・計画的に政府が支出を行うという「単年度主義の弊害是正」と、2025年度の基礎的財政収支黒字化は基本的にバッティングする概念
SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミスト(1日付リポート):
- 金融所得課税強化や自社株買い規制など反市場的な政策は盛り込まれなかった。一方、中長期の財政運営に関して「経済あっての財政」と明記され、分配よりも成長重視ということで評価できる
- 日本のジニ係数は低下しており所得格差は縮小している。労働分配率が過去45年間ほぼ50%で一定であるため、賃金が増えないのは名目GDPが増えないため。経済政策は分配よりも成長を優先すべきであろう
PB黒字化の目標年度明記せず、マクロ政策の制約懸念-骨太原案
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2022-06-01 05:33:01Z
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