「安さ」を売りにしてきた楽天モバイルが、「月額0円」の携帯料金プラン(データ使用量1ギガバイトまで)を廃止すると発表した。利用者らからは「裏切られた」との批判の一方、「企業として当然」などと容認する意見も上がり、波紋を呼んでいる。「0円プラン」は新型コロナウイルス禍で苦境にあえぐ人たちなどの助けになってきた側面があり、廃止への反応の大きさには格差問題も透けて見える。識者とともに考えた。【後藤豪】
「0円廃止」に記者の質問が集中
「楽天モバイルは(本サービス開始から)2年がたち、ホップ、ステップ、ジャンプのホップの段階が終わりました。他社とのギャップを埋め、差別化することでさらに進化をしていきます」
5月13日に東京都内で開かれた記者説明会で、楽天モバイルの三木谷浩史会長はそう強調した。説明会では、新サービスのプランなどがお披露目された。その中で最も注目を集めたのが、楽天が2021年4月からコロナの感染拡大で苦しむ人たちを「応援するという意味を含めて」(三木谷氏)設けていた、現在の「0円プラン」の廃止だった。
会場にいた記者たちからも「ユーザーが逃げていくのではないか」「(0円を)やめる時期が早いのではないか」「『0円廃止』は黒字化にどれだけ貢献できるのか」などと、この点に質問が集中した。反響は大きく、会場で私(記者)の隣に座っていた旧知のフリーランスのライターが帰り際に言った。「『0円プラン』廃止の説明があってから、まったく他の話が頭に入ってきませんでした」
SNS(ネット交流サービス)上では「改悪」「0円ユーザーにとっては裏切り」「解約する」「0円じゃなきゃ使う理由がない」といった批判が広がり、中には「生活保護申請に近づいていく」「コロナで収入が落ち込んだ中、1年間モバイル無料でつながった仕事」などと苦しい生活をうかがわせるツイートもあった。ツイッターでは発表当日、「楽天モバイル」「楽天の携帯料金」など関連ワードがトレンド入りした。
三木谷氏「0円でずっと使われても困る」
ここで、楽天モバイルのこれまでの歩みを振り返る。
同社は20年4月、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクに続く自前の回線を持つ「第4の携帯電話会社」として本サービスを開始。携帯市場をドコモなど大手3社が寡占していた状態の中、低価格を売りに新規参入した。
当初は、「高速データ通信無制限・3278円(税込み、以下同)」という一つの基本プランのみで、先着300万人を1年間無料に。そのキャンペーンの終了に伴い、現在のプランを21年4月にスタート。データ使用量1ギガバイトまでを無料にする「0円プラン」を導入した。
ただ、3社の牙城を崩して顧客を獲得するために、投資がかさんだ。場所によっては他の3社に比べて通話がつながりにくく、通信のための基地局設置を加速。22年2月に、当初計画より約4年前倒しで第4世代(4G)移動通信システムの人口カバー率96%を達成した。
だが、低価格路線と通信環境の改善を進めた結果、携帯事業は21年12月期(1~12月の通期)で4200億円の赤字、今年1~3月期も1350億円の赤字となった。
そして今回の決断。「月額0円」など現行プランは6月末で終了する。7月1日からの新料金は、最低ラインが1078円(月間3ギガバイトまで)。20ギガバイトまでの2178円、使用量が無制限の3278円の料金プランは据え置く。
三木谷氏は、新プラン説明会と同じ日にあった楽天グループの決算説明会でこう述べた。「まあ、お金を0円でずっと使われても困っちゃうというのがぶっちゃけな話かな。すごく正直に言って」
菅前政権下で値下げ圧力
携帯電話料金を巡っては、菅義偉前政権下で大きく状況が変化した。総務相を経験し、通信行政に強い影響力を持つ菅氏が…
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2022-05-23 07:00:00Z
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