[ロンドン 14日 ロイター] - 暗号資産(仮想通貨)ビットコインの採掘業者にとって「天国」だったカザフスタンが、その輝きを失うかもしれない。燃料価格引き上げへの抗議デモを受けて1月初旬に全土でインターネットが一時遮断されたのをきっかけに、規制強化への懸念が強まり、一部の大手業者が他国に拠点を移そうとしている。
カザフスタンは昨年、米国に次ぐ世界第2位のビットコイン採掘(マイニング)拠点となった。そのカザフ政府がネットを遮断したことで、採掘に使われるデータセンターがオフラインとなり、世界のビットコイン計算能力が約13%落ち込む事態となった。
カザフスタンの全国ブロックチェーン・データセンター協会のアラン・ドルジエフ氏は、現在、大半の採掘業者がネットワークに再接続されていると述べた。
しかし、ロイターが取材した4つの主要採掘業者によると、カザフ政府が暗号資産業界への監視を強め、業界の安定性と将来性に懸念が広がっている。ネットの遮断はそうした懸念に拍車をかけたという。
電力コストの安さにひかれて中国からカザフに拠点を移した採掘業者のビンセント・リュー氏は、環境の変化を踏まえて北米かロシアへの移転を検討し始めた。
「2、3年前、われわれはカザフスタンを採掘産業の天国と呼んでいた。政治環境と電力が安定していたからだ」と説明。「状況を見極めているところだ。ハッシュレート(採掘能力)の一部をカザフスタン国内に残し、一部を他国に移すことになりそうだ」と語った。
ビットコインなどの暗号資産は、難解な数学問題を解く強力なコンピューターによって「採掘」される。コンピューターは世界的なネットワークに接続されている。この過程で大量消費される電力はしばしば、化石燃料を電源としている。
かつては中国が採掘の一大拠点だったが、同国政府が暗号資産業界への締め付けに乗り出したため、採掘業者やデータセンターは大挙してカザフに移転した。
昨年8月時点でカザフは、世界のハッシュレートの18%を占めるに至った。中国からのシフトが始まる前の4月には、この割合が8%にとどまっていた。
<電力を巡る懸念>
カザフの採掘業者は、大半が老朽化した石炭火力発電所に電力供給を頼っており、脱炭素化を目指す当局にとって悩みの種だ。採掘業者による電力の大量消費が原因で、カザフは電力を輸入し、国内供給を割当制にせざるを得なくなった。
カザフ政府は現在、大半が無登録で外資所有の暗号資産業者について、課税と規制の方法を検討している。政府は昨年、無登録の採掘業者の取り締まりを計画していることを明らかにした。政府は、無登録業者が登録済み業者の約2倍の電力を消費していると推定している。
採掘業者BTC・KZの共同創業者、Din-mukhammed Matkenov氏は、中国から採掘業者が押し寄せ、電力を大量消費することによって国内業者の苦境は強まっており、顧客は米国かロシアに拠点を移すかもしれないと話す。
「カザフスタンの採掘産業の発展と安定性が、脅かされていると思う。非常に不安定になっており、利益で電気代と給与を支払えるかどうか分からない。わが社は破綻の瀬戸際にあり、顧客は政情がもっと安定している国を探している」と語った。
カザフのエネルギー省にコメントを要請したが、すぐには返信が得られなかった。
しかし、4つの採掘業者によると、カザフは税率と労働コスト、設備コストが比較的低いため、依然として魅力がある。
カナダの採掘業者Pow.re.のマイク・コーエン氏は「資本の充実したプロジェクトを展開する場合、カザフの方が西側諸国よりもずっと迅速に事が運び、ビジネスがしやすい」と指摘。「この地域で事業を行おうとする人々は、地政学リスクに対する許容度が高く、化石燃料を電源とすることにためらいはない」と述べた。
(Tom Wilson記者)
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2022-01-22 04:57:00Z
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