みずほフィナンシャルグループ(FG)は17日、一連のシステム障害で引責辞任する坂井辰史社長の後任に木原正裕執行役を起用する人事を正式発表した。あわせて再発防止に向けてシステムの総点検や人材の増員などを盛り込んだ業務改善計画を金融庁に提出した。1年に及ぶ相次ぐ障害でみずほによるデジタル関連の新規投資は遅れている。企業統治改革も急務で、新体制が「空白の1年」を挽回するのは容易ではない。
17日開いた記者会見には木原次期社長と加藤次期頭取に加えて、取締役会議長や新経営陣の人選を検討した社外取締役も出席した。坂井社長は会見を欠席した。
木原氏は2月1日付で、システム障害の責任をとり辞任する坂井辰史社長の後任として就任する。みずほは4月1日付としていた社長の交代時期を前倒しした理由として、坂井氏の体調不良によるものだと説明した。
社外取締役で指名委員長の甲斐中辰夫氏は「木原氏は視野が広く、決断力に優れる。社員のやる気を引き出せる」と社長に選んだ理由を説明した。
会長には今井誠司副社長が就く。みずほ銀行の頭取には加藤勝彦副頭取の昇格が決まっていた。会長と頭取は4月1日付で交代する。
みずほは2021年に9度のシステム障害を起こした。ATMに通帳やキャッシュカードが取り込まれるなどのトラブルを起こしたほか、9月のシステム障害時には外為法が定めるマネーロンダリング(資金洗浄)対策のための手続きを省き、同法違反を問われた。
17日に公表した計画の概要では約40に及ぶ追加の改善項目を盛り込んだ。障害の再発防止について、22年3月をめどにシステムの全面点検に乗り出すと表明した。ハードの老朽化がシステム障害の原因だったこともあり、関連機器を全面的にチェックする。木原氏は改善計画について「不退転の決意で臨む」と語った。
システム関連の人員体制も見直す。新システム「MINORI(みのり)」の稼働後に携わっていた人材を減らしたが、システムの運用力を弱めた反省から足元で2割程度の人員を戻した。今後も保守運用を中心に拡充する。みずほ銀行は日本IBMで副社長を務めた下野雅承氏を社外取締役として招く人事を発表した。
みずほのシステムは主要ベンダーだけでも富士通など4社が参加し、構造が複雑だ。改善計画では各ベンダーの横断的な人員の増強を盛り込んだ。システムだけでなく外為法違反への対応も迫られており、経営全体で法令順守体制を強化する。
システムの安定運用に向けて木原氏は「現場実態を把握して戦略や資源配分をする」と強調した。金融庁から指摘された企業風土の改革にも取り組む姿勢を示し「上意下達になることなく、社員の自律的、建設的な行動を歓迎する組織にする」と話した。
デジタルトランスフォーメーション(DX)を軸に構造改革を進めようとした矢先に相次いだシステムトラブルはみずほのDX戦略を遅らせた。21年に予定していた紙の通帳からデジタル口座「e―口座」への移行は無期延期になり、年20億円弱のコスト削減効果が実現できていない。21年夏を予定していたベトナムのフィンテック企業への出資も正式公表が12月にずれ込んだ。
システム障害に対応する投資負担も膨らんだ。期初に計画していた投資額は100億円から130億円に、経費は80億円から145億円に引き上げた。それでも22年1月に再びシステム障害が発生。金融機関の基盤である信頼が揺らいでおり、みずほ銀の個人口座は通常を上回るペースで解約が起きているという。
この1年間で、グーグルやペイパル・ホールディングスといった米国勢が日本市場のフィンテック企業への買収を決めるなど、外資のテクノロジー企業を交えた競争は激しくなっている。
今回の人事では会長に第一勧業銀行出身の今井氏を起用し、日本興業銀行出身の木原氏、富士銀行出身の加藤氏と旧3行で主要ポストを分け合うこととなった。旧行意識で無用な摩擦を生むことを避けたようにも映る。企業風土改革を進め、旧行の融和を一段と深めていくことが新体制には課されている。
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2022-01-17 13:36:23Z
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