トランプ氏はティックトックの売却交渉を巡り「仲介手数料」を要求している=ロイター
【ワシントン=河浪武史】トランプ米大統領が、中国の北京字節跳動科技(バイトダンス)の動画投稿サービス「TikTok(ティックトック)」の売却交渉を巡り、米連邦政府に取引仲介料を支払うよう要求している。明確な法的根拠は見当たらず、大統領の権力を振りかざした過剰介入に困惑や反発が広がる。
米政権が求めるティックトックの売却には、トランプ氏に法的権限がある。財務省などが管轄する対米外国投資委員会(CFIUS)が「1億人の米利用者の個人情報が中国当局に流出するリスクがある」と判断し、トランプ氏に米事業の切り離しを勧告。同氏は関連法に基づいて、バイトダンスに9月15日までに事業を売却するよう命じ、マイクロソフトが買収に名乗りを挙げている。
ただ、トランプ氏は「売却益の大部分は米財務省に支払わなければならない」と主張し、交渉を複雑にする。不動産業で名を成した同氏は「ティックトックは米国で成功を収めており、大家である米国は『テナント料』をもらう権利がある」と独自の論拠を展開する。
トランプ氏の主張に明確な法的根拠はない=AP
実際、バイトダンスのティックトック事業は米国で急成長した。17年に米動画サービス「ミュージカリー」を買収して米国市場に参入したが、当時の取得額は約10億ドル。それが今回の売却交渉では300億ドル規模に膨らんだとされ、マイクロソフトが買収すれば、中国側に巨額の資金が渡ることになる。トランプ氏はそれを嫌う。
問題はその「仲介料」の要求に法的根拠が見当たらないことだ。1つはバイトダンスが支払うCFIUSの審査料だが、関連法は最大30万ドルと定めており「取引額の大部分」にはならない。大統領には「国際緊急経済権限法」で海外勢の資産を没収する権限もあるが、大規模テロなどの対抗措置との位置づけで、バイトダンスに適用するのは無理がある。
バイトダンスになんらかの法令違反があれば、罰金を科すこともできるが、マイクロソフトとの売却交渉と関連づければ司法権の乱用とも取られかねない。米財務省関係者は「税金くらいしか思いつかない」と言うが、米中は租税条約を結んでおり、バイトダンスの売却益への課税権は原則として中国当局にある。
マイクロソフトによる買収交渉が進む=ロイター
米戦略国際問題研究所(CSIS)のテクノロジー政策部門のトップ、ジェームス・ルイス氏は「米当局にそのような仲介料を求める権限はない。トランプ氏は交渉をかき回して騒ぎを楽しんでいるだけだ」と断じる。トランプ氏も具体策に言及しておらず、政権内ですら「いろんな手段があるが、自分は見当がつかない」(クドロー国家経済会議委員長)と困惑が広がる。
法的根拠の薄いトランプ氏の仲介料の要求は、ティックトックの売却命令の正当性を汚しかねない。中国の「インターネット安全法」は同国企業に個人情報の提供などを求めることができ、日米欧は中国の強権体質をそろって懸念してきた。米政権のティックトック排除はその一環で、経済活動や言論・表現の自由を重んじる日欧当局や産業界は理解を示す。
ただ、トランプ氏自らが国家の過剰介入に動けば、その理解は一気に薄れる。フェイスブックなどの利用を制限する中国は、米国のティックトック排除に真正面から反論できなかった。それが、トランプ氏が仲介料を要求し出した途端に「公然の窃盗だ」(中国共産党系、環球時報の胡錫進編集長)と反撃。トランプ氏の不規則発言は、かえって中国に隙を与える結果になった。
2日にマイクロソフトのナデラ最高経営責任者(CEO)と電話会談したトランプ氏は、買収に直接ゴーサインを出した。ワシントンの法曹関係者には「マイクロソフトは米財務省ではなく、トランプ陣営に巨額献金でもするのではないか」といぶかる声すらある。トランプ氏が民間取引に過剰に関与すれば、癒着や腐敗など政官民の健全な距離感を損なうリスクもある。
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2020-08-06 20:18:59Z
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