トヨタ自動車の収益力が際立つ。新型コロナウイルスの感染拡大による需要急減で、2020年4~6月期は自動車メーカーが軒並み巨額赤字を計上したが、トヨタは1588億円の最終黒字となった。市場の底入れ局面でいち早く販売回復につなげ、お家芸の原価低減で損益分岐点を引き下げた。第2波への懸念や、ライバルが巻き返しを期する中、回復を持続できるかが問われる。
強さを見せたのが、中国市場だ。1~6月の販売台数は2%減、1~7月では1%増とプラスに転じた。中国4工場を停止するなど、新型コロナで混乱していた2月時点の想定を上回る。
中国市場は新型コロナの影響からいち早く立ち直ったが、独フォルクスワーゲン(VW)の1~6月の販売台数は17%減、仏ルノーや日産自動車などの日仏連合は20%減だった。トヨタの回復の早さは明らかだ。
日本メーカーは高品質で、買い替え時の価格も安定しているとの評価から、高級車「レクサスRX」だけでなく、「カローラ」なども売れている。6月の販売は単月ベースで過去最高となった。
自動車メーカーの4~6月期の決算では、日産が2855億円の最終赤字を計上。VWやダイムラーも1000億円超の最終赤字となった。黒字だった米フォード・モーターも一時的要因だ。
トヨタは北米や欧州でも、他社に比べ販売の落ち込みを抑えられている。ただ販売面だけで突出した黒字額を計上できたわけではない。
「まだまだ無駄な工程を減らせる」。8月上旬、トヨタ幹部は生産の効率化などコスト削減の余地に言及した。日産は工場閉鎖などの構造改革を発表し、独ダイムラーは「今のコスト構造ではもたない」(ハラルト・ウィルヘルム最高財務責任者)と判断し、2万~3万人規模の人員削減を検討する。各社が抜本的な施策に乗り出さざるを得ないのとは対照的だ。
原価低減は前期実績で2650億円(材料の市況変動を除く)の効果があり、毎年2000億~3000億円規模に達する。結果として「リーマン・ショック時よりも200万台以上、損益分岐点を下げることができた」(豊田章男社長)。
新型コロナという未曽有の事態すら、さらなる体質強化の機会と捉える。世界各地の工場では、稼働休止で生まれた時間を使い、製造工程を詳細に見直した。部品共通化や部材調達見直しなど従来の活動を超え、保守工程の一部を自社で手がけ、「損益分岐点についてはもう100万台下げる取り組みを進めている」(幹部)状況だ。
底堅い決算を受け、6日のトヨタ株は一時、前日比3%高となった。21年3月期の純利益を初めて公表したが、売上高と営業利益は、5月の公表値を据え置いた。
新型コロナの収束はまだ見えていない。国内でもトヨタやグループ各社で感染者が増えている。米国では感染者が増加している州で、「工場稼働に影響が出ている」(幹部)という。
今回、年間の世界販売台数計画を910万台と20万台引き上げた。7~9月に前年同期比15%減、10~12月に同5%減、21年1~3月には同5%増に転じる道筋を描くが、感染再拡大によって消費マインドが再び冷え込む懸念は残る。
出遅れた他社の攻勢も激しくなる。販売奨励金を含めた値引き競争の中で目標を達成し、「感染者を広げず、稼働を止めないように最大限の対策を打っていく」(幹部)という製販両面の対応が求められる。
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2020-08-06 11:36:21Z
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