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ドル円一時140円台 「日本売り」放置するな - 中国新聞デジタル

 「急激な為替変動は望ましくない」。このせりふを政府はいつまで繰り返すつもりなのか。

 外国為替市場で円が一時1ドル=140円台に下落し、24年ぶりの円安水準を更新した。7月に139円台を記録して以降、やや円高に戻していたが、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が先週末の講演で利上げを続ける姿勢を強調したことで再び円売りが加速した。

 円安は食料や原材料などの輸入コストを押し上げている。さらに円安が進めば、国民の暮らしを痛めつける物価高はより深刻さを増すことになる。

 この1週間で3円以上も円安が進行し、1月からはすでに25円以上も下落している。輸出企業への恩恵などプラス面もあるが、この水準の円安はさすがに放置できるものではなかろう。政府は口先ではなく、実効的な対策を急がなくてはならない。

 日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は円が125円近くまで下落した2015年に「さらに円安に振れることは、なかなかありそうにない」と国会で述べた。この発言が基になり125円程度が日銀の「円安防衛ライン」と受け止められてきた。そのラインを15円も下回る水準である。

 当時は米国の再三の利上げでもそれ以上に円安が進まなかった。それを踏まえれば今の円安はあくまで一時的で、下げ止まりが近いのかもしれない。

 だが今回の円安が一時的ではなく、日本経済の本質的な衰退を反映しているという指摘も根強い。そうであれば円安は恒常化し、さらなる「日本売り」も起きかねない。国民が円を見切り、海外に資金を移すことになれば膨れ上がった国債の暴落さえも現実味を帯びてくる。

 投機的な動きが強まり、円安が加速する事態になれば政府はためらわずに為替介入をすべきだ。日本経済を底上げする中長期的な政策を積み上げることも怠ってはならない。

 輸出企業が円安で得た利益を、賃上げや設備投資に十分に振り向けていないことが課題になっている。企業の貯金に当たる内部留保は増え続け、500兆円を超えた。にもかかわらず実質賃金が目減りしているのは「分配」が不十分だからと言わざるを得ない。

 円安の恩恵の多くが一部企業の「貯金」になっている現状は改めるべきだ。米国は企業の内部留保に20%の税金をかけている。企業に収益を国内にきちんと還元させ、内需喚起につなげるにはこうした課税強化策も検討してもらいたい。

 経済は市場原理に委ねるのが原則であり、介入に否定的な意見があるかもしれない。しかし日銀は国債を買い支えることで長期金利を抑え込んでいる。

 市場原理をゆがめるような日銀の異次元緩和が日米の金利差を広げ、円安の要因になっている。財政政策を硬直化させないよう、出口戦略も急がねばならない。

 円の実力を示す実質実効レートは50年前の水準にまで落ち込んでいる。円安を「バーゲンセール」のように受け止め、国内の土地や建物を外国資本が買いあさる動きも広がっている。

 政府は「日本売り」を放置してはならない。効果的な対策で景気を再浮揚させ、適正な為替水準を実現しなくては日本経済の復活はあり得ない。

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2022-09-02 22:00:00Z
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