【ニューヨーク=後藤達也】金融市場が米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和縮小(テーパリング)の議論に動じなくなってきた。28日の米連邦公開市場委員会(FOMC)は資産購入の減額に向け、検討を進めたことを明らかにしたが金利や株価は大きく動かなかった。FRBによる年初からの地ならしで、市場では2022年初めごろの開始という見方が浸透し耐性ができつつある。ただ、インフレ圧力が弱まらなければ市場が再び動揺するリスクもはらむ。
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「市場予想よりもタカ派(金融緩和の修正に積極的)だった」(米シティグループのアンドリュー・ホレンホースト氏)。FRBが28日公表した声明で注目されたのは「今後複数の会合で(経済情勢の)進捗を確認する」という文言だ。
「進捗」には特別な意味がある。FRBはこれまで「最大雇用や物価安定目標に向けさらなる著しい進捗があるまで」現状の資産購入を続けるとしてきた。「進捗」はいわば資産購入のペースを緩めるテーパリング開始の目安。その目安の精査を今後深めていくことを宣言した。
声明の発表直後に米長期金利はやや上昇したものの長続きはしなかった。記者会見でパウエル議長は最大雇用は「まだ遠い」とも指摘し、経済情勢次第では緩和修正を急がない点も強調したためだ。米国株も声明や記者会見の前後で大きくは動かなかった。
FRBは年明けごろから一部の幹部がテーパリングを将来議論する可能性を示唆し始めた。その後、両論を併記するかたちで少しずつ地ならしを進めてきた。2~3月には景気の急回復で、長期金利が急上昇する場面もあったが、市場は徐々に落ち着きを取り戻した。
ニューヨーク連邦準備銀行の6月の市場関係者への調査ではテーパリングは21年末から22年初めごろに始まるとの予想が多い。最近は「9月のFOMCでテーパリングの予告が始まり、12月に正式発表になる」(米ゴールドマン・サックスのヤン・ハチウス氏)との見方が大勢だ。パウエル議長は7月14日の議会証言で「私たちがやろうとしていることはある程度市場で織り込まれている」とも述べている。
FRBが市場との対話を慎重に進める背景には13年の教訓がある。バーナンキ議長(当時)が市場の備えがないときにテーパリングを示唆し、市場が動揺した。だが、今回は「うまく情報発信されてきたため、13年のようにテーパリングが市場をかき乱すことは起こりにくい」(米ヌビーン・アセットマネジメントのブライアン・ニック氏)との評価が多い。
市場が再び動揺する最大のリスクはインフレの動向だ。経済再開や強力な経済対策で今年の春以降、米国のインフレは急加速した。FRBは「一時的」と繰り返し、市場関係者にも同様の見方が広がったが、同時に「経済再開は前例がなく、インフレは予想以上に上がり、持続する可能性もある」(パウエル議長)というリスクも指摘している。
市場はいま、テーパリングが一巡し、FRBの資産残高が横ばいとなる22年終盤ごろに最初の利上げがあるとみている。だがそれは22年中に物価上昇率が2%程度にまで落ち着いていることが前提だ。
先進国では過去10年以上にわたり物価が上がりづらい状況が続いてきたため、民間エコノミストの間でも急速なインフレは「一時的」との見方が多い。金利先物の動きからはじく利上げ回数の市場予測は、この1カ月ではむしろ低下している。それだけに想定外に2%を大きく上回るインフレが長引けば、緩和の縮小から利上げに向けた市場の見通しは修正を迫られ、長期金利の急上昇や株価調整といった波乱を招くおそれもある。
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2021-07-29 02:31:36Z
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