米国債の大規模な売りはある段階に達すると、特定の投資家グループに一段の売りを促し、動きが増幅されることがある。この2カ月の売りで、この段階に達したように見受けられ、米金融市場は戦々恐々としている。
売りを余儀なくされたグループとは、7兆ドル(約743兆円)規模の住宅ローン担保証券(MBS)市場の投資家だ。米国債利回りとそれに連動する住宅ローン金利が突然に大きく上昇すると、住宅ローンの借り手は借り換えの動機が薄れる。借り換えが減るということはMBSが早期償還されず、投資家にとっては資金の回収に時間がかかることを意味する。この回収期間(デュレーション)が長いほど、金利上昇による痛みは強まる。
そこで投資家は保有している長期の米国債を売却するか、デリバティブ(金融派生商品)のポジションを調整することで、MBSポートフォリオで予想外に生じたデュレーション長期化を相殺しようとする。コンベクシティヘッジと呼ばれる現象だ。既に売りが優勢なところに追加の売りが出ることで利回り上昇が増幅される「コンベクシティイベント」は、1994年と2003年に発生している。
現在ではMBS市場で巨大な存在感を示す米連邦準備制度が、ある程度の安定をもたらし、ヘッジの必要性を抑制してはいる。金融当局は毎月約400億ドル相当のMBSをバランスシートに追加している。それでも大勢のMBS投資家によるポートフォリオ調整の波は、米国債利回りに大きく影響し、資産クラスを越えて波及しかねないと市場ウォッチャーは警戒する。
JPモルガン・チェースの米金利デリバティブ戦略責任者、ジョシュア・ヤンガー氏は「当局を除く全ての投資家がいずれはコンベクシティヘッジャーになる。金利上昇とともにポートフォリオのデュレーションが伸び続ければ痛みは増すばかりだからだ」と述べた。「ヘッジが必要な人にとっては柔軟性が増しているため、金利が上昇しても列車が脱線することはないが、脱線しなくても停車するのが難しいことはある」と話した。
25日の米国債市場では10年債利回りが一時、23ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%) 上昇し、約1年ぶり高水準の1.61%になった後、売り浴びせはやや失速した。モルガン・スタンレーの米金利戦略責任者、グニート・ディングラ氏は顧客へのリポートで、コンベクシティヘッジのニーズは全般に10年債利回り1.60%近辺で天井を打つ可能性が高いと分析。イールドカーブの中央部分で利回りに上向きの圧力が加わる可能性が高まると指摘した。
5年債利回りの上昇はさらに顕著で、26bp上昇し約0.86%に達した後、やや押し戻された。
みずほインターナショナルのマルチ資産戦略責任者、ピーター・チャットウェル氏は、5年債利回りの急上昇は売り浴びせが単なるリプライシングを超えて、コンベクシティに向かう警告だと指摘。米株式やクレジットスプレッドへの向かい風が強まることを示唆するものだとしている。ナスダック100種株価指数はこの日、約4%安となる場面があった。
目が離せない米5年債利回り、メルトダウン警戒ライン0.75%-みずほ
ただ10年債利回りがわずか2カ月で約1.5ポイント上昇し、債券投資家に広範な損失をもたらした03年のような事態を予想する人はほとんどいない。MBSのほぼ3分の1を保有している連邦準備制度は、デュレーション縮小のためのヘッジをしないからだ。別の3分の1を保有する米銀についてもおおむね同様だ。
米国債売り、MBSのヘッジが増幅させる可能性低い-JPモルガン
それでもバンク・オブ・アメリカ(BofA)は先週、MBS投資家を中心に600億ドル余りのコンベクシティヘッジ需要があると推計した。
原題:Convexity Hedging Haunts Markets Already Reeling From Bond Rout(抜粋)
(相場を更新し、新たに市場関係者のコメントを加えます)
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2021-02-25 17:20:00Z
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