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日銀政策で運用業界の競争阻害か、大手ETFの信託報酬高止まり - ブルームバーグ

日本銀行が相対的に保有コストが割高な上場投資信託(ETF)を購入してきたことで、資産運用業界の競争原理をゆがめ、政策の国民負担増加にもつながる恐れがあるとの指摘が出ている。

  中央大学商学部の原田喜美枝教授は「日銀は公平のためにと時価総額に比例する形で買い入れを行ってきた。しかし時価総額の大きい大手運用会社のETFほど信託報酬(運用・管理費用)率は高めで、結果的に公平でない」と指摘する。信託報酬の低いものを多く買うなどの見直しを行ってもいいのではないか、と言う。

  日銀のETF買い入れのうち約8割を占めるTOPIX型は恩恵が大きい。日本株が下落する中でも、最大規模の「TOPIX連動型上場投資信託(信託報酬は0.110%)」は4月末までの過去1年で時価総額が1兆4398億円、2位の「ダイワ上場投信-トピックス(同0.110%)」は6571億円増加した。

  半面、信託報酬がそれらの半分近い「iシェアーズ・コアTOPIX ETF(同:0.060%)」は583億円の増加にとどまる。もともと規模が大きく信託報酬が割高な大手ETFが、さらに自己増殖的に膨らむ構造だ。原田教授はこうした状況が「結果的に複数の大手運用会社に対する補助金的存在となっている。運用業界の競争を阻害し、成長にゆがみが生じている」とみる。

TOPIX連動型ETFの時価総額上位
コード 名称(運用会社)
時価総額(4月末、億円)
信託報酬(%、税別)
  1306
TOPIX連動型上場投資信託(野村AM)
0.110
1305
ダイワ上場投信-トピックス(大和AM)
0.110
1308上場インデックスファンドTOPIX(日興AM) 483930.088
1348MAXIS TOPIX上場投信(三菱U国際)  138850.078
1475iシェアーズ・コア TOPIX ETF(ブラックロック)  2977 0.060
1473One ETF TOPIX(アセマネOne)  1787 0.078

  指数連動型ETFは会社によって運用結果がほとんど変わらない。信託報酬の高いETFを多く購入することは、コストの高いパッシブマネージャーを優先的に選定することに等しい。日銀が保有コストの高い商品を多く買うことで、大手3社に入る信託報酬は巨額化している。

  ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストによると、日銀が保有するETFは時価ベースで約33兆9000億円(4月末時点)と市場全体の9割を占める。「信託報酬の支払いは年間約480億円で、このうち約440億円が相対的に信託報酬の高い大手3社に落ちている」と話す。

  日銀は4月27日、ETFの銘柄別買い入れを従来の時価総額から、市中流通残高を勘案した方法に変更すると発表した。日銀自身が市場を巨大化させている中で、今後は日銀保有分を除いて市場で評価されているETFをより重視する。原田教授は「市場のゆがみを大きくすることに対する警戒心があるようだ」とみる。

  もっとも、今回の変更は根本的な解決につながらないとの声が出ている。ニッセイ基礎研の井出氏は「運用大手3社以外のETFを今までより多く買うことになって問題点が是正されるように映るが、運用報酬の支払いはストックベース。既に保有している高い信託報酬のETFが安いETFに置き換わるわけではない」と指摘する。同氏の試算では、年6兆円の買い入れペースで年間信託報酬を1600万円程度節約するにすぎない。

  井出氏はさらに「信託報酬が高止まりしていることで日銀の国庫納付金が減り、結果的にその分が国民負担になっている。今回の変更も焼け石に水だ」と語る。運用成績がほとんど変わらない指数連動ETFはより低コストなものを選ぶのが基本とした上で、「これだけの大口顧客になれば本来は料率引き下げの働きかけを行うべきだ」と言う。

  日銀がTOPIXとともに買い入れ対象としている日経平均型の時価総額上位の信託報酬は、時価総額最大の「日経225連動型上場投資信託」が0.220%、2位の「上場インデックスファンド225」は0.225%と、TOPIXより信託報酬水準は高め。5位のiシェアーズ・コア 日経225ETF」は0.105%となっている。

  ETF信託報酬に関するブルームバーグの取材に対し、日銀はコメントを控えた。

日経平均連動型ETFの時価総額上位
コード名称(運用会社)時価総額(4月末、億円)信託報酬(%、税別)
1321日経225連動型上場投資信託(野村AM)566380.220
1330
上場インデックスファンド225(日興AM)
265120.225
1320
ダイワ上場投信-日経225(大和AM)
261770.160
1346
MAXIS 日経225上場投信(三菱U国際)
12846   0.170
1329
iシェアーズ・コア 日経225ETF(ブラックロック)
53680.105
1369One ETF日経225(アセマネOne)2836   0.155

  図表注:野村AMは野村アセットマネジメント、大和AMは大和アセットマネジメント、日興AMは日興アセットマネジメント、三菱U国際は三菱UFJ国際投信、アセマネOneはアセットマネジメントOne

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2020-05-24 22:00:00Z
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