日本銀行の黒田東彦総裁は21日、金融政策決定会合後の記者会見で、海外経済を巡る下振れリスクは幾分低下したものの、依然として大きいとし、緩和方向を意識した金融政策を維持する意向を示した。
黒田総裁は、海外経済の下振れリスクについて、米中通商交渉や英国の欧州連合(EU)離脱が進展する一方で、米中交渉の第2段階合意に向けた道筋の不透明性や中東情勢を巡る地政学的リスクなどを挙げ、「ひところよりも幾分低下したとはいえ、依然大きいと考えている」と指摘。「海外経済その他のリスクは十分に注視して緩和方向を意識した金融政策を引き続きとっていく」と述べた。
会見のキーポイント |
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2%の物価安定目標に関して「長い目でみた為替レートの安定にも資するだろうということで金融政策を運営している」と指摘。低金利環境の長期化による「副作用に留意が必要だが、現時点では政策の効果がコストを上回っている」と述べ、引き続き、物価目標の実現を目指して強力な金融緩和を推進していく考えを示した。
日銀は同日の金融政策決定会合で、長短金利操作付き量的・質的緩和の枠組みによる政策運営方針の維持を賛成多数で決定した。同時に公表した新たな「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、政府が決定した財政支出13兆円規模の大型の経済対策を踏まえ、2019~21年度の実質経済成長率見通しを全て上方修正した。一方、物価見通しは全ての年度で小幅下方修正した。
総裁は成長率の上方修正について、政府の経済対策と金融緩和環境が相まって景気を押し上げる効果があるとポリーミックスに言及。昨年10月の消費増税後の消費減少は、「一時的なものであり、個人消費の増加基調は維持されている」と説明した。
ブルームバーグ・エコノミクスの増島雄樹シニアエコノミスト |
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「日銀は物価目標の実現に向けて長期戦を戦っている。下振れリスクの緩やかな後退は、日銀によるリスク資産の購入が目標を下回る状態が続く可能性を示唆しているが、その枠組みは2021年まで維持されるだろう」 リポートをご覧になるにはこちらをクリック |
一方、物価見通し引き下げは「振れの範囲内。物価の基調が変わったとはみていない」と指摘、2%に向けて徐々に上昇率を高めていく状況に変わりはなく、「物価上昇に関するモメンタムは維持されている」との認識を示した。
また、20年、30年、40年の超長期金利について、イールドカーブコントロール政策導入後に「ちょっとフラット化し、また少しスティープ化してきたが、現在でももう少し超長期金利が上がってもおかしくないと思っている」との認識を示した。また、国債買い入れ額が減少を続ける中、80兆円の年間保有増加額を「めど」として掲げ続けていることについて「あくまでもめどであり、内生変数」と買い入れ額は金利動向次第との認識を示した。
21日の債券市場では、新発20年債利回りは0.29%、新発30年債利回りは0.44%、新発40年債利回りは0.47%だった。
(黒田総裁の発言やキーポイントを追加して更新しました)
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2020-01-21 06:42:00Z
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