日本銀行は長期・超長期金利の過度な低下は阻止する必要があると判断しており、その局面として長期金利がマイナス0.3%を明確に割り込むような状況を一部は想定している。複数の関係者への取材で明らかになった。
関係者によると、長期金利(10年国債利回り)が9月に入り一時マイナス0.295%まで低下したことについて、日銀は許容レンジの下限に近づいたとみている。実際に金利低下の抑制に動くかどうかは、その時のスピードや背景なども考慮する必要があるという。
日銀は現行のイールドカーブコントロール(YCC)政策の下で、長期金利の誘導目標を「ゼロ%程度」とし、上下0.2%程度の変動を許容する方針を示してきた。関係者によると、日銀には長期金利に関して厳密な許容レンジはないものの、金利変動を追認する形でレンジ拡大などを繰り返せば、YCC政策の枠組み自体が崩れる可能性を警戒する声もあるという。
米欧の中央銀行が緩和姿勢を強める中で、海外金利の低下に連動する形で日本の金利も低下。9月4日には過去最低のマイナス0.3%に迫るマイナス0.295%を付けた。20年債利回りも同日、2016年7月以来の水準となる0.015%まで低下した。日銀は長期・超長期金利の一段の低下が、年金や保険の運用利回り低下を通じて消費者心理に悪影響を及ぼす可能性に懸念を強めている。
足元では、米中貿易摩擦に対する不安後退を背景とした海外金利の上昇に連れて日本の長期金利もマイナス0.2%程度まで戻しているが、市場では、円高進行を回避するためにも、長期金利の許容変動幅を拡大したり、さらなる金利低下を容認するといった思惑が一部に出ている。
日銀は18、19日に金融政策決定会合を開く。これに先立ち、欧州中央銀行(ECB)は12日に3年半ぶりの利下げに踏み切り、米連邦公開市場委員会(FOMC)も18日に7月に続く追加利下げを決めると予想されている。
関係者によると、日銀は現在の長期金利目標下でのさらなる変動許容幅の拡大や金利低下の容認には慎重だ。日銀はYCC政策導入の根拠となった16年9月の「総括的な検証」で、イールドカーブの過度なフラット(平たん)化は保険や年金などの運用利回り低下などを通じて「広い意味での金融機能の持続性に対する不安感をもたらし、マインド面などを通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性」を指摘している。
すでにYCC導入時のイールドカーブと比べてフラット化が大きく進行。関係者によると、日銀はそうしたリスクの顕在化に警戒感を強めており、長期金利がマイナス0.3%を明確に割り込んだり、20年国債利回りがマイナスに沈むような局面では、国債買い入れのさらなる減額や入札での下限利回りの設定など、さまざまな金融調節手段を駆使して過度なフラット化の抑制に動く可能性が大きい。
黒田東彦総裁がインタビューで、一定の金利変動を容認する姿勢を示す一方、「全く限度がないのかというと、ゼロ%程度という金利の操作目標の意味がなくなる」と語ったと日本経済新聞は6日に報じた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-09-12/PXN3P7T1UM0Z01
2019-09-12 08:17:00Z
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