[東京 15日 ロイター] - 昨年来の上昇相場をリードしてきた値がさグロース株の厳しい下げが止まらない。米国株式市場で大型ハイテク株が下落したことを受けた動きだが、一方ではワクチン接種に伴う経済正常化期待からバリュー株物色が活発化するなど物色面での二極化が鮮明になってきた。こうした一連の動きについて、金融相場から業績相場への移行を象徴するとともに、その先にあるデフレ脱却を織り込み始めたとの指摘もある。
12日の米国株式市場では、ダウ工業株30種が5日連続で最高値を更新しながらも、楽観的な米景気見通しから米10年債利回りが再び上昇する中でインフレ高進懸念が再燃、大型ハイテク株が下落しナスダック総合は反落した。
これらを受けて日本株でも、東京エレクトロン、SCREENホールディングス、信越化学工業などの半導体関連株のほか、キーエンス、任天堂も売り優勢となっている。象徴的なのは機械株で、寄り付き前に発表された1月機械受注が予想を上回ったことから、比較的低位の工作機械株は総じて堅調となったが、ファナック、SMCなど値がさ株は軟化した。
日米ともに、これらグロース株と言われる銘柄群に、悪材料が出た訳ではない。それでも下げたのは、米長期金利の上昇で、PER(株価収益率)が高い米国の大型ハイテク株の相対的な割高感が意識されていることが背景にあるという。また、日本のグロース株に関しては「昨年の上昇相場で内外機関投資家が腹いっぱい買っていたため、利益確定の動きが断続的に出ているようだ」(国内証券)との声が聞かれる。
とくに、国内の値がさグロース株は、昨年3月の株価水準が極めて安い水準だったことで、いつでも利益確定できることが、期末を控えたこのタイミングで需給面のあだになった格好だ。こうした動きの一方で、銀行株や鉄鋼株などを中心にバリュー株、出遅れ株に物色の流れがシフト。値がさ株の下落で日経平均の動きが伸び悩む中で、バリュー株の堅調からTOPIXの値上がり率が大きくなっている。
「経済正常化に伴う景気回復が前面に押し出されるような物色動向となる」(野村証券・エクイティ・マーケットストラテジストの澤田麻希氏)一方で、過剰流動性が支えになっていたグロース株が売られることで、市場では金融相場から業績相場に移行しているとみる関係者が多い。また「本来なら金利が上昇に転じる初期局面では、企業業績の好調を示すものであり、ここでの株価上昇はロジックとして成り立つ」(三菱UFJモルガンスタンレー証券・チーフ投資ストラテジストの藤戸則弘氏)と指摘されるだけに、業績上向きという実態の裏付けが十分なグロース株も期末接近に伴う決算対策売りが一巡した後は、再び物色される期待もある。
一方、最近のバリュー株物色においては、PBR(株価純資産倍率)が1倍割れの銘柄の修正高が目立つ。これについて岡地証券・投資情報室長の森裕恭氏は「PBR1倍割れの銘柄が多かったのは、デフレ下で資産持ちの会社は買えないというロジックがあることが大きい」と指摘した上で「先行き日本で長期金利が上昇に転じた場合は、デフレ脱却が期待されるようになるため、米長期金利が上昇したここで、業績相場への移行とともにデフレ脱却を織り込み始めた可能性もある」とコメントしていた。
水野文也 編集:石田仁志
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2021-03-15 04:24:00Z
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