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三菱重工、5000人削減・配転 旅客機事業の凍結発表 - 日本経済新聞

スペースジェットは事実上、事業化を凍結する

スペースジェットは事実上、事業化を凍結する

三菱重工業は30日、2021年度から3年間の中期経営計画を発表した。ジェット旅客機事業は「開発活動をいったん立ち止まる」(泉沢清次社長)との表現で事実上の凍結を公表した。開発費は過去3年間の約20分の1にあたる200億円に減らし、次世代エネルギーなどに投資する。こうした技術の収益化には時間がかかり、稼ぎ頭が見えない3年間になる。

「大幅な資金を投入し、開発を進めるのをやめる。(開発活動を)立ち止まるという判断になったことは申し訳ない」。泉沢社長は国産旅客機事業「スペースジェット」の開発活動の凍結について、こう説明した。

開発を進めている90席クラスの初号機について商業運航のための型式証明の取得作業は続けるが「飛行試験は当面見合わせる」(泉沢社長)方針だ。開発はやめないが、量産などの事業化については事実上凍結する方針を示した格好になる。

中計期間中のスペースジェットへの投下資本は200億円。試験飛行などを実施せず人員も大きく減らすためで、過去3年間(3700億円)の約20分の1となる。

米ボーイング向け航空部品事業なども需要の低迷が続く。固定費削減のため23年度までに国内外で5千人規模の配置転換や人員削減を実施する。「希望退職は行わない」(泉沢社長)という。

中計の最終年度となる23年度は連結売上高4兆円と、20年度見通し(3兆7千億円)比で8%増を狙う。事業利益率は7%(20年度見通しは1%)への改善を目指す。

今回の中計は19年に就任した泉沢氏が初めてまとめた計画だ。歴代経営者は航空や火力設備などを手がける事業所出身のカラーが強かったが、泉沢氏は技術本部出身で、事業所出身の色が薄い。中計は2つの要素で縦割りにとらわれない「泉沢カラー」が際立つ。

水素を活用できるガスタービンの開発でCO2の排出量を減らす

水素を活用できるガスタービンの開発でCO2の排出量を減らす

その1つが、売上高4兆円を達成するため示した成長分野だ。ガスタービンの高度化など脱炭素技術の開発を拡大し、航空などに投じてきた開発投資の大半をエネルギー分野などに振り向ける。エネルギー関連や物流自動化などを「成長領域」と位置づけ、30年度に売上高1兆円を目指す。これら分野への投資も過去3年間の2倍にあたる1800億円に増やす。

主力のガスタービンを例に取れば現在は天然ガスを使うが、水素を混焼すれば二酸化炭素(CO2)の排出量を大幅に減らせる。将来は水素だけで燃やすタービンの実用化を目指す。グループ会社で手がけるCO2回収技術も柱の1つで、グループが総合的に持つ技術を横断で活用し、50年にカーボンニュートラル(実質ゼロ)を目指す。

2つ目はソフト戦略だ。ガスタービンなどの事業で取り組むデータ活用や人工知能(AI)の高度化など、デジタルトランスフォーメーション(DX)戦略を進める。

こうしたソフト戦略は収益化に時間がかかる。欧米の重工大手は脱・炭素を見据えて火力発電などの構造改革に着手し、ソフト戦略で先行する。独シーメンスは火力発電機器部門の需要縮小を見据え、電力やエネルギー部門を切り出した。米GEもソフト戦略に大きくカジを切っている。三菱重工は設備依存が強く、デジタル戦略では世界大手への遅れが目立つ。

新たな中計には将来の技術開発へのテーマや文言が多く並んだが、中長期で稼ぎ頭になるかどうかは未知数だ。泉沢社長は「中計の3年間で終わるわけではない」と語り、将来的な稼ぎの種にする姿勢を強調した。

航空需要の回復が見通せない中で、スペースジェット事業の存廃の決断は先送りしたままの中計発表となった。本当に成長領域を芽吹かせたいのならば、不振の航空機分野についても思い切った合理化が必要になる。

(川上梓)

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2020-10-30 09:19:34Z
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