香港で民主化デモが続く中、香港のキャセイパシフィック航空に対して社内外で圧力が強まり、従業員たちは難しい立場に置かれている。
キャセイパシフィックの従業員たちはBBCの取材に、中国本土へ向かう便で勤務した場合、拘束されるかもしれず、恐怖を感じていると心境を明かした。
従業員の中には、到着地で中国当局に携帯電話を調べられる場合に備え、別の携帯電話を持参しようか検討している人もいた。
操縦士2人を解雇
キャセイパシフィックに対しては、中国側が数週間前に、デモに関わった従業員を職務に就かせないよう要求している。
同社は今月に入り、デモ関連の事件に関与したとして、操縦士2人を解雇した。
先週には、ルーパート・ホッグ前最高経営責任者(CEO)が辞任。キャセイパシフィックの元操縦士で立法会(議会)議員のジェレミー・タム氏も、同社を退社した。自らの政治的信念により、同社にこれ以上の政治的圧力がかかるのを食い止めるためと、タム氏は説明した。
タム氏はBBCに、「キャセイパシフィックが恐怖で包まれているのを感じる。恐怖は広がっていて、従業員たちはフェイスブックのアカウントを心配し、誰かが自分のメッセージを見て会社幹部に密告するのではないかと心配している」と述べた。
同氏によると、リスク回避のため、ソーシャルメディアのアカウントを変更した従業員もいるという。
BBCのカリシュマ・ヴァスワニ・アジア経済担当編委員は、「キャセイの話は、香港でビジネスをする企業が、中国が何を欲するかを勘案しないとどうなるかを示す教訓といえる」と伝えた。
疑心暗鬼の従業員
キャセイパシフィックの匿名希望のある乗務員はBBCの番組で、「フライト中は政治の話はしないようにしている。同僚の誰が味方かわからないからだ。会社は『違法』デモを支持すべきではないと言っている」と言い、こう続けた。
「デモに行ったことを親中国の人に知られたら、その人は会社に報告するだろう。政治問題を理由にではなく、何か安全上の問題を理由にして。言われた側はそれで仕事を失うかもしれない。だからフライト中に話はできない」
「一人ひとりの行動が影響する」
キャセイパシフィックの鄧健栄(オーガスタス・タン)新CEOは19日、違法行為と会社方針に背く行為は「一切認めない」と従業員に周知した。
従業員に向けたメモで鄧氏は、「仕事で客に仕えているときだけでなく、仕事以外でも、ソーシャルメディアや日常生活で一人ひとりがどう行動するかが、会社としてどう見られるかに影響する」と説明。以下のように加えた。
CEOのこの通達について上述のタム議員は、「自由時間の行動をどうやって管理するというのか。まったく香港らしくない。香港の私たちには言論の自由がある。独自の司法権と判例法がある」と批判する。
「いい時も悪い時も、私たちは力を合わせてきた。第2次世界大戦や日本による占領、1997年のアジア通貨危機の時も」
BBCはキャセイパシフィックにコメントを求めた。同社は以前、ロイター通信に対し、社内の従業員に関する問題についてはコメントしないと述べている。
(英語記事 Cathay Pacific staff speak of climate of fear)
https://www.bbc.com/japanese/49445145
2019-08-23 08:15:39Z
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